この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第3巻収録。将軍家の紋章・葵紋を身につけて畜生働きを繰り返す謎の盗賊「葵小僧」が登場。尻尾を掴ませない葵小僧に平蔵もきりきり舞い。平蔵に対抗心を燃やす北町奉行所の悪計も加わり、火盗改方長官としての面目が丸潰れとなる。はたして葵小僧の正体とは……?
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葵小僧は実在の凶賊
鬼平を翻弄した葵小僧という盗賊、先に言ってしまうと実在した人物である。史実でも長谷川平蔵宣以によって捕らえられている。委細は違うものの、実在の葵小僧も人を殺し、婦女子を手籠めにするような血も涙もない凶賊だったという。
劇画版では前後編にわたって葵小僧と鬼平との闘いが描かれる。正直、初めて劇画版の妖盗葵小僧を読んだ時には前編の終わりで葵小僧が捕まらず、なんとも悔しい思いをした。
捕まらないどころか、鬼平は葵小僧の手がかりすら掴めないで終わるのだ。鬼平や火付盗賊改方が虚仮にされる様子は見ていて辛くすらなる。
日にち薬はきっと真実
葵小僧に手籠めにされ、その後の夫婦の仲がおかしくなったことを気に病んで川に身を投げようとした妻に鬼平はこう諭す。
「どうしても死にたいのなら、一年後にしてごらん……一年経てばすべてが変わってくる……。人間にとって時の流れほど強い味方はないものだ……」
この妻は残念ながら苦しみを乗り越えられなかった夫とともに無理心中という最期を迎える。しかしこの鬼平の言葉で、彼女自身は身投げを思いとどまった。
この時の流れを待つという考え方は原作の池波氏もことあるごとに触れている。苦しみの最中にいるときには1年後がはるか遠く思えるものだが、1年経てば確かにその苦しみが薄れていることは多い。この考え方を知って、自分はずいぶん楽になったものだ。
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奉行所と火付盗賊改方の確執
この回では奉行所と火付盗賊改方の確執、というより奉行所が火付盗賊改方を疎んじ、妬んでいる様子も書かれている。火付盗賊改方と奉行所はそもそも役割が違うため、対抗意識を持つのはお門違いではある。
だが、史実として実は火付盗賊改方は盗賊や放火犯などの凶賊を相手にする業務だけに荒っぽい人員が揃っていたとされる。それだけに江戸市民は決していい印象を彼らに抱かなかったし、奉行所も自分たちの仕事を引っ掻き回されるということで火付盗賊改方を良く思っていなかったという史料もある。
ただし、鬼平が江戸市民から評価の高い火付盗賊改方長官であったことも史実である。その人気を疎んじた奉行がいたとしても不思議ではないだろう。
大科 友美
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