この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第8巻収録。関東の鹿山一党と、関西の生駒一党が協力して火盗改方潰しに乗り出してきた。平蔵の配下、またはその家族ばかりを狙う手口に、怒り心頭の平蔵。両党きっての刺客二人と平蔵が2対1の激闘を繰り広げるシーンは圧巻。
スポンサーリンク
卑劣なり、同心の家族を狙う刃
今は堅気で船頭の老盗賊、友五郎が主人公となるストーリーだ。粂八にそそのかされ、鬼平の煙管を盗み出した手口は衰えを知らない。同じくして、火盗改メ同心の家族ばかりを狙って殺害する事件が頻発するのだ。
同心本人ではなく、弱い立場の家族などを付け狙う手口はまさに、火盗改メに対する挑戦に他ならないぞ。すでに盗賊稼業から足を洗って男手一つで義理の息子を育ててきた友五郎ではあったが、その息子を人質にするとは何とも卑劣な盗賊だろうか。
已む無く盗賊の助働きをせざるを得なくなった友五郎。手下の家族や関係者を幾人も殺害され憤怒する鬼平。友五郎の動きを鍵として、怒りに燃える鬼平の一刀流が炸裂するぞ。
白川夜船(しらかわよふね)
冒頭で友五郎に寝室へと忍び込まれて、愛用の煙管を盗まれた鬼平。粂八との会話で、白川夜船だったという台詞が登場する。この言葉には大きく二つの意味がある事をご存知だろうか。
一つは本作の通り、ぐっすりと熟睡をしていて何も気づかなかったという意味。もう一つは、自分を大きく見せるためにハッタリをかます、大ぼらを吹く、といった意味があるのだ。京都へ物見遊山に行ったと吹聴する男に対して、白川(白河)はどのような風情だったかを問うてみる。すると「白川は夜に船で渡ったが、寝ていたので良く分からない」と答えたそうな。
つまり地域としての白川はどうだった?と聞いたのに、白川を河川の名前と勘違いをして更にハッタリをかましたという話に由来する言葉なのだな。うっかり熟睡したならば仕方ないが、間違っても嘘に嘘を重ねる事はしたくないものだ。
スポンサーリンク
鬼平、怒りの一閃
鬼平の策略にまんまと乗った外道どもは、ここぞとばかりに鬼平討伐へと乗り出すのだ。しかし、そこはまさに鬼の策略と言えるだろう。全てを把握していた鬼平は、外道の剣客二人と対峙する事となる。卑劣な犯行を繰り返してきた悪党に対して、一切の容赦が無くこれを成敗するのだ。
まさに鬼による成敗だろう。このシーンは鬼平犯科帳の中でも特に、鬼平の格好良さを際立たせていると思うのだ。是非とも本作を読んで興奮して頂きたいぞ。
さて、極悪盗賊の助働きをした咎で友五郎は島送りとなり、密偵になる事を望んだ老盗賊の夢は幕を閉じるのだ。と本作ではこのような結末なのだが、実はこの友五郎、『掻堀のおけい』『狗』などのエピソードで登場する事になる。鬼平犯科帳の世界に留まる事となった友五郎。どのように活躍をしていくのかも期待だな。
この作品が読める書籍はこちら
滝田 莞爾
最新記事 by 滝田 莞爾 (全て見る)
- 鬼平犯科帳 漫画:第265話『同門の宴』のみどころ - 2022年9月9日
- 鬼平犯科帳 漫画:第48話『おしま金三郎』のみどころ - 2022年9月5日
- 鬼平犯科帳 漫画:第67話『殺しの波紋』のみどころ - 2022年9月1日