この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第51巻収録。加賀藩の木戸番・未ノ助は、自宅前で行き倒れの死体を発見する。死体の懐には大金が入っていた。正月拝賀の行列が通過する道だったため、すぐに報告しなければならないが、未ノ助は大金に目がくらみ報告をせずに死体を隠してしまう。じつはこの死体、平蔵が追っている盗賊の頭だったことから……。
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遺体が巻き起こす大事件
木戸番が発見した遺体の懐には大量の小判が。通常であれば木戸番は管理者に報告をして終了をする事件ではあったのだが、やはり金の魔力は恐ろしいものだ。
小判をくすねようと悪心を抱いた木戸番によって、遺体ごと番小屋に隠すところからストーリーが展開されて行く。盗賊の仲間割れと正月の登城行列を描いた本作は、江戸時代の新年が描かれていて非常に興味深い作品に仕上がっているぞ。
木戸と木戸番
非常にデリケートな話なので、具体的な単語や地名には一切触れない事を了承頂きたい。木戸というのは武家屋敷と町屋敷の境界にある木製の門の事だ。大きな外枠の内側に、通り門がある事が一般的のようだな。
木戸番とはその門番の事で、木戸の横にある番小屋に住んでいる事から番太、番太郎と呼ばれたぞ。さてこの番太、江戸時代にあった士農工商の身分制度に当てはまらない身分の者が従事していたと言われる。門番の他にも現代でいう警察業務の雑用や補助の仕事をしていたようだ。
江戸市中にはこの身分の者が3000人から5000人程度いたという説が有力なのだ。警察業務だけではなく様々な業務に従事してはいたのだが、どのような業務かについても省略をさせてもらおう。
江戸時代の差別
現代であれば科学的な知見から常識的な事であっても、江戸時代ともなると技術も乏しく、また心理的な側面からある種オカルト的な判断をされる事が多かったとされる。様々な理由から被差別側に置かれる事の多かった時代でもあり、例えば罪人がその身分を剥奪される事も理由の一つだ。
それ以外にも特定の感染症を天罰や仏罰とみなして、患者を家から追放をしたというケースもある。患者は宗教施設の参拝を課せられる事もあったようだ。その場合に患者が露頭に迷い、特定の施設への街道沿いで今で言うホームレス状態になってしまう事も。
被差別側の人が従事出来る仕事にも制限があった時代で、現代においても特定の職業への差別心は完全に消えているとは言い難いだろう。事実、昭和時代であれば特定の地域の特定の職業の家柄という理由から縁談が断られたり、企業への就職が不利になる等の事案は確認出来るのだ。
歴史として差別が存在した理由は、人類の無知が故だと思うのだ。しっかりと歴史から学んで、これからの時代に新たな差別を生まない事こそが現代人の使命ではなかろうか。お天道様の下、どのような身分の人でも対等に接する鬼平の心意気を、我々も体現したいものだ。
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滝田 莞爾
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