この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第153巻収録。同心・細川峯太郎が主役のエピソード。第十二巻「草雲雀」で細川とわりない仲となり、江戸払いとなったお長が、江戸に舞い戻っているという。お長の父親によれば「死ぬほど逢いたい男がいる」からだという。三年前の情事が忘れられない細川は、平蔵に内緒で単独行動に出るが……。
スポンサーリンク
すっとぼけ役の細川峯太郎
鬼平犯科帳に登場する同心の中でも、失敗続きで鬼平に怒られてばかりといえば、細川峯太郎と木村忠吾のおとぼけコンビだろうか。この二人は一緒に外回りをする事もあるし、鬼平が作中で「誰ぞあるか」と呼ぶと、ひょっこり顔を出すのも大抵がこの二人だ。
本作は細川峯太郎とお長の関係を知っていれば更に楽しめるかもしれないな。完全なる続編という訳ではないのだが、前日譚として「草雲雀」を読むのも良いだろう。ぜひ細川の“ふんどし事件”でピンと来る、鬼平ファンの仲間入りを果たしてほしいぞ。
本作は同心細川が墓参りをしていない、と心配する和尚が役宅を訪問する場面から始まる。細川が墓のある目黒へと足を向けられない理由とは一体何なのだろうか。
目黒不動尊(瀧泉寺)と桐屋の黒飴
本作だけではなく、鬼平犯科帳にたびたび登場するのが目黒不動尊だ。平蔵の妻、久栄の大好物として描かれている桐屋の黒飴も登場する事が多い。調べてみると、目黒不動尊は江戸時代にも非常に盛況な寺で、門前町も大いに栄えていたそうだ。
目黒の特産品として名高かった竹の子を使った竹の子飯も、目黒飴(練飴)と並ぶ目黒の名物として記録に残っているぞ。余談だが鬼平犯科帳に登場する“黒飴”は、実は白いさらし飴ではなかったか、という説もあるのだ。目黒だけに黒飴、なんて洒落だとする説も面白いではないか。
目黒のさんまの殿様
落語にもある有名な目黒のさんまは、目黒不動尊の門前に立ち並ぶ茶屋の一軒が舞台と言われているぞ。しかしここで示す目黒が本当に目黒不動尊の目黒かといえば、それを確定する事は出来ないのだ。なぜならば江戸時代の目黒は、現在よりもずっと広い範囲を指していて、特定出来る要素が少ないとも言われている。
落語に登場する殿様は、“さんまは目黒に限る”と勘違いをしてオチとなる訳だが、一方の細川もやはり勘違いからオチを迎えるようだ。往々にして男性は過去の思い出を忘れられないとも言われるが、こと女性との事柄になるとその傾向は強いかもしれないな。
鬼平犯科帳では細川と忠吾の恋愛話が多く登場するも、ほとんどが失敗して終わるというお約束なのだ。愛する奥さんにだけ目が向くよう、そろそろ細川にも目を覚ましてほしいと願ってしまうぞ。
この作品が読める書籍はこちら
滝田 莞爾
最新記事 by 滝田 莞爾 (全て見る)
- 鬼平犯科帳 漫画:第265話『同門の宴』のみどころ - 2022年9月9日
- 鬼平犯科帳 漫画:第48話『おしま金三郎』のみどころ - 2022年9月5日
- 鬼平犯科帳 漫画:第67話『殺しの波紋』のみどころ - 2022年9月1日