この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第22巻収録。黒人帰還兵のサミーは、犯罪を犯して作った金でゴルゴを雇う。それはベトナム戦争時代、唯一、自分を人間扱いしてくれた親友・バーネットが非業の死を遂げたためであった。バーネットの仇討ちを約束したゴルゴは、薬品を使用して肌を黒くし、黒人の集団にまぎれてターゲットに近づくが……。脚本:岩沢克
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血染めの紙幣で復讐を引き受けるゴルゴ
鉄板の人気要素である「仇討ち」の王道を行く本話。依頼人のサミーは、銀行強盗で作った金でゴルゴに親友の仇討ちを依頼するが、直後に警官隊の銃撃に倒れてしまう。黒人差別の根強いアメリカで確かに育まれた二人の友情、そして、恐らくは自分が死ぬことを承知の上で強盗を決行し、ゴルゴに望みを託すサミーの覚悟が涙を誘う一幕だ。
ゴルゴが報酬の出どころを気にしないのは有名だが、本話でサミーに告げた「金を得る手段が金の本質を変えるとは思わない……」という一言は、それこそ金というものの本質を現しているようで、印象的な言葉である。
先まで“黒”くなるプロの変装術
ゴルゴが特殊な薬剤で日焼けして黒人に変装するという珍展開も本話の有名ポイント。全裸の彼を見た警官の「コックの先まで“黒”だぜ!?」という台詞は、『キャサワリー』の「レスボスの女が潜在的に恐れているRODだ……」や、『波止場を我が手に』の「この野郎、こんな時にまだおっ立てたままだぜ」と並ぶインパクトシーンと言ってもいいだろう。
黒人達のアジトで日焼けに勤しんでいる場面では、いつもの白ブリーフをはいていたゴルゴだが、読者の目に映らないところでそれも脱いでコックの先まで焼いたのだろう。プロの仕事恐るべしである。
現在も続いている黒人差別との戦い
本話では黒人差別を巡る確執が描かれ、有色人種に対する警察の横暴についても触れられている。これは決して過去の話題ではなく、最近(2020年9月)も大坂なおみ選手の「抗議のマスク」で話題になったように、白人警官による有色人種の殺傷事案は現代でも後を絶たない。
本話で黒人組織の一員としてゴルゴと関わったエバ・ウィルソンも、大坂選手と同様、若い女性でありながら差別撤廃のために戦う志の人だった。本話が発表されたのは1974年のことだが、それから45年以上を経た現在でも、平等を求める黒人達の戦いは続いているのだ……。
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東郷 嘉博
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