この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第202巻収録。姉に頼まれ一人暮らしをはじめた義弟の様子を見に行った公安職員・三輪は、「隣人は年に1回か2回しか帰ってこない」という義弟の話にピンとくる。過激派のアジトではないかと調査に乗り出すが、じつはゴルゴの隠し部屋であることが判明し……。脚本:ながいみちのり
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獣の穴は小洒落たマンション
未開のジャングルか山中で傷ついたゴルゴがじっと穴にうずくまっているようなシーンを覚悟しながらページをめくったがその心構えは必要なく拍子抜けした。だが、実に面白い異色中の異色作といえよう。公安の三輪が浜松のちょっと洒落たマンションに住む大学生の甥を訪ねるところから物語は始まる。
甥の隣に住む人物が果たして本当にゴルゴなのか、最後まで明確にはされず、読者も含め三輪も、多分そうに違いない、という推測に終わるのだが、その隔靴掻痒的なストーリーに様々な妄想をかき立てられ、極上の娯楽ミステリーに仕上がっている。

硬派なゴルゴの新たな一面を発見
ゴルゴと思われる人物が猫を可愛がってくれ、猫も彼になついている、という記述があるが、ゴルゴは人間より動物を信頼しているような節もある。動物は人間と違って嘘はつかないし、好き嫌いの感情もストレートでわかりやすいからだろう。動物側も、対等の心で接するゴルゴに信頼を寄せると思われる。
おしゃべり好きな老婦人の話に耳を傾けながら、優しく猫をなでるゴルゴの姿を想像するのは実に楽しい。普段は人を最大級の警戒レベルにさせてしまう雰囲気だが、丸い縁眼鏡をかけ、カールのかかったカツラでも被っているのではないだろうか。
壁に耳あり後ろに目あり
「うど」という危険な離岸流の話が重要な伏線となっている。一見穏やかな日常にもいつも何か危険が潜んでいる。その危険を「後ろにも目があるのか」と思われる用心深さでゴルゴは常に回避している。今回のキーパーソンは、マンションのエントランスに日がな一日猫を抱いている老婦人である。
おそらくは一人暮らしで暇を持て余し、いつも話し相手に飢えているので、通りかかる人誰彼に話しかけては、新たな住人にはさりげなく情報提供しつつ、相手の内情を探り出してしまうのだろう。もしやこの婦人も、ゴルゴの雇った人物だとしたら…。

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野原 圭

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