この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第202巻収録。台湾で高齢者の連続殺人事件が発生。被害者の共通点は全員、帝国陸軍・中野学校の出身者だった。捜査にあたった李警部は、被害者が執筆していた原稿にカギがあると推理する……。戦後、台湾に渡り秘密組織「白団」を結成した日本人にスポットをあてた一編。脚本:横溝邦彦
スポンサーリンク
白団とは?
本作品では白団(ぱいだん)の一人だった老人、鶴岡がキーパーソンである。鶴岡は戦争に敗北した惨めな自分の新たな活躍の場を求めて白団へ参加する。みなさんは白団のことをご存じだろうか。白団とは戦後台湾独立のため、台湾国軍を支援した旧日本軍人たちのことだ。
私は恥ずかしながら知らなかったため、本作品を読んだ後で改めてWikipediaなどで調べた次第だ。台湾での隠れた英雄とされているが、近年では日本でも白団を知っている人は少ないのではないだろうか。台湾は『返還前夜』『戦域ミサイル防衛 TMD幻影』『呉越同舟』などでも舞台になっているが、こうした隠れた歴史を知ることができるのもゴルゴ13の魅力の一つだろう。

芝田刑事の成長
鶴岡と対照的なのが、若い日本の熱血刑事である芝田だ。当然、白団のことなど知らない。そのため、鶴岡に対しても当初は無礼な態度が目立つ。容疑者を目の前にしてエキサイトするほど仕事熱心ということができるかもしれないが、鶴岡からは「貴様のような日本人が、戦後の軽薄な世相を、形成しておるのだろうな…」と評価される。
そんな芝田も、鶴岡から話を聞くうちに少しずつ心境が変化していく。そして、彼は鶴岡に命を助けられる。そのことで芝田の意識は大きく変わった。それまでは半ばヤケバチな感じで仕事をしており、クビすれすれのことばかりしている。そうじゃないと日本の警察官が謹慎中に無断で台湾に行くことなどありえない。しかし、鶴岡が芝田を変えた。まさに鶴岡の最後の希望どおり「最後の死に花を咲かせた」といえるのではないだろうか。
ゴルゴの真意に気付いた料理人
本作品では「熊の手」がキーポイントの一つである。少しだけタネ明かしをすると、満漢全席という料理に使う。毒殺ではない。ゴルゴは毒殺を好まないだろう。熊の手がどのように使われたのかは、ぜひ本作品を読んでみてほしい。熊の手を使った料理人は、ゴルゴの意図に気付き逃亡を図る。
空港で搭乗を急ぐ料理人とそれを見つめるゴルゴ。ゴルゴは自分の仕事の障害となる者を消し去ることに躊躇はない。『黄金の犬』では犬ですら抹殺している。料理人がその後どうなったかわからない。殺されてはいないように感じたが、逃亡に失敗して下手に警察に捕まるようなら殺されていたのかもしれない。監視を忘れないゴルゴが実に恐ろしい。

この作品が読める書籍はこちら

秋山 輝

最新記事 by 秋山 輝 (全て見る)
- ゴルゴ13:第424話『歪んだ車輪』のみどころ - 2024年3月3日
- ゴルゴ13:第534話『父という男』のみどころ - 2023年6月9日
- ゴルゴ13:第457話『北京の蝶』のみどころ - 2023年5月20日