この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第124巻収録。香港の中国返還を目前にして、鄧小平が逝去した。中国軍保守派は、このチャンスに政権の巻き返しを狙いクーデターを画策。中国のグリーンベレーと呼ばれる徐特務部隊の精鋭を送り込む。中国の公安警察からクーデターの黒幕の除去を依頼されたゴルゴは、クーデター派の戦略物資を運ぶ列車に機関士として乗り込むが……。
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香港を軸にした中国・台湾国際情勢
香港返還という歴史的な事案は利害関係者が多いだけに複雑怪奇でわかりにくい。新聞の国際欄・政治欄に毎日目を通す方でも、全体像や中国や台湾の動きを把握することは難しかったのでないだろうか。
今エピソードはそんな複雑な当時の中国・台湾の政治と経済情勢を把握するのによい教科書だ。中国VS台湾というだけでなく、長老VS若手勢力という構図も加わっており立体的に分かりやすい。さらに台湾のことを深く知りたいならば、『呉越同舟』『両洋の狭間に』『戦域ミサイル防衛 TMD幻影』の併読をお勧めする。
最後に勝つのはやはり……
謀略の画を描いて、これからの出世と活躍を信じて疑わなかった中国・台湾の双方の若手がラストであっさりと長老たちに凹まされるのが政治の奥深さだ。若手に軽んじられていたが、国のトップまで上り詰める人物は侮れないということか。一枚も二枚も上手であった。
その老獪な長老たちのモデルと思われるのは江沢民(江東民)と李登輝(李昇輝)であるが、もう一人の重要な人物が巨星堕つと描かれる鄧小平である。鄧小平については死の床につくアナザーストーリーとして『鄧小平のXデー』というエピソードがあるので参照されたい。
まだまだある“ゴルゴ香港もの”
タイトルが返還前夜ということで香港が舞台かと思わされるが、今エピソードでは香港そのものについては描かれない。とは言え、これを機会に“ゴルゴ香港もの”について興味が湧いた読者もいると察するので香港を舞台にしたエピソードを紹介しておこう。
まずは第16巻収録の『九竜の餓狼』。これは香港アクション映画を彷彿とさせる傑作で、ゴルゴへの復讐を誓う警部ショットガン・スミニーが登場する。シリーズきっての人気テーマ“ライバル対決もの”としても楽しめるというわけだ。
中国へ返還される前の経済力をバネに、香港独立をもくろむ経済人の謀略を描いた『偽りの五星紅旗』は本格派だ。こちらも中国政府が用意した3人の狙撃手が登場。香港・中国のパワーゲームを舞台にゴルゴとの対決が楽しめる。ぜひ一読されたい。
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片山 恵右
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