この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第115巻収録。鄧小平が病に倒れ、後継者争いが熾烈を極める中国政界。そんななか政府公認の超能力者・楊は、次期最高指導者は中央警備局長の陳だと予言する。楊がインチキ超能力者だと喝破していた共産党の李は、その予言が楊自身が鄧小平の後釜にのる陰謀だと断定する……。
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中国権力闘争に実名の大物登場
シリーズの舞台にはもはや定番となっている中国。『北京の蝶』『邯鄲の夢』など、ロマンチックなタイトルも見受けられる中、これは、おもわず目がさめてしまうタイトルである。
ポスト鄧小平の座を巡る赤裸々な権力闘争、それに絡む怪しげな超能力者の男と、彼を阻止しようとする勢力、北京地下に建設された秘密の通路と軍事拠点の存在、さらにゴルゴと鄧小平の邂逅といった興味深い要素が見事にかみ合い、スリルに満ちた展開の傑作となっている。フィクションでありながら、実在の人物が登場することで、虚実ないまぜの世界に引き込まれる。
超能力者は本当に存在するのか
他にも『心霊兵器』『テレパス』など超能力をテーマにした作品があるが、今回は奇術・マジックを利用して人を欺くパターンで、そのネタがなかなか面白い。いろいろなアイデアがあり、仕込みも手が込んでいる。マジックには化学・物理をはじめ様々な知識と応用、仕上げの演技力など多彩な能力が必要なのだと感心した。
日本でも、悩む人の相談を受けたセ宗教の教祖が、親の名前など次々に言い当てるという話があるが、それも弟子が、あらかじめその人の家のお墓などでチェックしているらしい。人の心を巧みに操る術は、万国共通なのだろう。
孤独な権力者が心を寄せる孤高の男
ゴルゴと鄧小平が交わす会話が哀しい。「君には一度会いたいと思っていたのだ・・しばらくつきあってくれないか」この言葉には、権力を手中に握るにつれ、信頼して本音を語れる人間を失った鄧小平の深い孤独が滲んでいる。
ちなみに鄧小平は元首相福田赳夫氏と会談し、当時秘書官として同行したかもしれない子息の康夫氏は、元首相として2014年日中首脳会談のお膳立てのため習近平に会っている。政治の世襲が日中外交において有効に機能した例だろう。鄧小平から習近平、福田赳夫から康夫、この時の流れはゴルゴにはどう映っているだろうか。
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野原 圭
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