この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第164巻収録。空母を持ち軍事力を世界に誇示したい中国人民解放軍。将軍の王は、ソ連製の旧型空母を最新鋭艦に改造し、その機会を虎視眈々と狙っていた。「どの国が空母を持っていいかは、アメリカが決める」という信念のもと、米国防情報局はゴルゴに空母の撃沈を依頼する。脚本:ながいみちのり
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航空母艦「遼寧」
本作は米中の軍事緊張を描いた作品だ。米中の軍事対立を描いた作品には『巨人共のシナリオ』などがある。ソ連崩壊後、扱いを持て余された空母数隻が中国へ売却された。「キエフ」、「ミンスク」は売却当初の名目どおり観光施設化しているが、「ヴァリャーグ」は本作のように空母として修復されて、現在では「遼寧」として活動している。
現代のドーリットル空襲
ドーリットル空襲をご存じだろうか。ドーリットル空襲は、太平洋戦争初期に米海軍の空母から陸軍爆撃機B-25を発艦させて日本を初空襲したものだ。陸軍の爆撃機を空母から無理矢理発艦させて、爆撃後は中国まで飛んで着陸するというかなり奇抜な作戦で、日本に与えた衝撃は非常に大きなものだった。
本作に登場する王将軍がドーリットル中佐を目指しているかどうかは不明だが、少なくともアメリカはドーリットル空襲の再来を警戒したようだ。確かに改装空母に電磁カタパルトを搭載すれば、大型機の発艦も可能だ。電磁カタパルトといえば、中国海軍3隻目の空母「福建」には実際に搭載されている。本作は2010年の発表だが、それから10年ちょっとで本当に電磁カタパルトが実現してしまった。それだけ中国の台頭が著しいということだろう。変化という点では日本も同様だ。
いぶし銀の郭
作中では、アメリカから「空母をどの国が持っていいかはアメリカが判断する」と言われており、何様のつもりだろうかと思ってしまう。また、過去には『大地動く時』で空母保有への野望を阻止された話もあった。しかし、今では「いずも」「かが」に対して事実上の空母化改修が行なわれており、日本も空母保有国になってしまった。ゴルゴの話にも驚かされることは多いが、現実のスピードの速さにも驚くばかりだ。
本作で渋い役どころは王将軍の副官郭だろう。ただの軍人ではなく暗殺もこなす。ゴルゴによる空母への侵入を素早く察知し、ゴルゴの意図をかなりの範囲で見抜いている切れ者だ。ゴルゴの空母侵入後、王将軍は慌てふためいて使いものにならないが、郭は冷静な指揮を行なっている。さすがにゴルゴが空母を破壊した方法は見抜けなかったが、こういう渋い人物は敵キャラでも好きだ。1回だけの登場はややもったいない感じもする。
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秋山 輝
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