この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第195巻収録。人工授精の問題を通じて父子の絆を問う人間ドラマ。“子供が実の父親を知る権利”をめぐって粉叫する学会。知る権利を主張する外科医・国分は、自分が人工授精によって誕生したという事実を知る。しかも実の父親は“知る権利”反対派で産科医師会副会長の上松だった……。
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出自を知る権利
本作では出自を知る権利を取り扱っている。日本では、非配偶者間人工授精で生まれた子どもが1万人以上ともいわれているそうだ。そうしたなかで、出自を知る権利を巡って議論が交わされている。確かに育ての親と実は遺伝的なつながりがないとわかった場合、遺伝的に誰とつながっているのかを知りたい気持ちはわかる。
遺伝的なつながりを知らないままだと、結婚相手が実は近縁者だったということもあり得るだろう。一方で知る権利を認めてしまえば、養育の義務や相続が新たな問題となり得る。簡単には結論が出ない問題だ。
参考:「出自を知る権利」とは?日本は法律なし。海外では保障する国も
ゴルゴもあきれ気味?
本作での国分医師は、出自を知る権利を強力に推し進めようとしている。彼は「神の手」と呼ばれる優秀な外科医だが、かなり思い込みが強い人物だ。こういう頭はいいんだろうけど…という医師を現実世界でも最近よく見かけるような気がするのは気のせいか。医師がキーパーソンとして登場する話としては『神の領域』『荒んだ大地』などがあるが、医療倫理がテーマになっているのは本作くらいではないか。
そんな国分医師は、知る権利に対して反対の意見を持つ上松医師と対立する。その対立を巡りゴルゴが登場するわけだが、正直なところこの程度のことでゴルゴへ依頼するのはどうなのだろう。しかも殺害ではなくかなり変わった依頼内容で、依頼を聞いたゴルゴも半ばあきれ気味な感じがする。それでも受けた依頼はきっちりと遂行するゴルゴはやはりプロだ。どのような依頼なのかは、実際に本作を読んでみてほしい。
父という存在
本作で光るのは、上松医師が父というものの存在について国分医師に語った内容だ。いわれてみれば確かに私たち男は、精子を放出するだけで、子どもとのつながりは極めて希薄である。しかし遺伝的なつながりがなければ父ではないのか?と上松医師は問う。
遺伝的なつながりよりも、子どもに愛情をかけて育ててくれた強い意志をもった男こそが父なのではないかと。父としてだけでなく、男とはかくあるべきという、上松医師を通じたさいとう先生の強いメッセージを感じた。自分も強い男でありたいと思うのだが、なかなか難しい…
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秋山 輝
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