この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第169巻収録。日本で製造されている海外向け紙幣を狙うテロ組織「アフリカ解放のサイ」と、組織の殲滅を依頼されたゴルゴとの戦いを描く。新宿署に勤める引退間近の老刑事。彼が最後の仕事として挑んだ事件が、やがて国際的な組織犯罪へと発展していく……。脚本:品川恵比寿
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「お金持ち」ではなく「お金燃し」のお話
ある業界では100万円の札束を「厚揚げ」と呼ぶらしい。10万円を「薄揚げ」と呼ぶかどうかは知らないが、これはこの厚揚げの原料「お札」の話である。お札については贋札をテーマにした『ラストジハード 最後の聖戦』があるが、今回は、正真正銘本物の札束を景気よく燃やし、厚揚げの黒焦げを作る、というストーリーである。
「エンリージアイ」というキーワードの謎や、ターゲットの目的が、依頼主ですらわからないため、その意図を手探りで突き止めなければならないゴルゴ、単独捜査で事件に迫る初老の刑事の最後など見所が満載である。
日本のお札はなぜ偽造が難しいのか
「お札は版を彫って刷るので“版画”の一種である」は、日本の小口木版画の第一人者・柄澤 齊氏の言である。彼が版画として最も愛するお札は、夏目漱石の千円札ということだ。お札を作るには、デザインされた図柄を、ビュランという極細の彫刻刀で金属版に彫って型を作り、特殊印刷、裁断という流れになる。
版を彫る人達は工芸官として、いつか新札の発行が決まるその日まで、財務省造幣局内でひたすらその腕を磨き、鍛錬を続けるらしい。その緻密な版と特殊印刷、さらに、素晴らしく上質な紙の使用が偽造を防いでいるのだ。
アナログオヤジ刑事がゴルゴをサポート
“山蛭の韮沢”の異名をとる定年間近の刑事を軸にストーリーが展開するのだが、彼はデジタル社会に取り残され、若い者に疎んじられる典型的なオヤジである。しかし頭脳は『ドナウ・ライン迷路』のジャヌー警部に及ばないものの、体を張ったど根性は『巨人の星』の星一徹並である。
足を使った彼の地道な捜査を利用してゴルゴはミッションを成功させるが、本人は何も知らない。あの怪我の手当は最大の疑問になるだろうが、それは「知らぬが仏」であり「知ったらホトケ」になり、せっかくの年金をもらう前にあの世へいかねばならないだろう。
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野原 圭
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