この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第118巻収録。激化するチェチェン紛争。最後の一人になるまでジハード(聖戦)を続けると強く結束する独立派だったが、独立を支援してきたチェチェンマフィアのヴィターリが、莫大な資金を私利私欲のために使い始める。裏切りを知ったヴィターリの兄・マクダエフは、民族の「血の掟」に従いヴィターリ抹殺を断行するが……。脚本:国分康一
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悲惨な過去もゴルゴには無関係
ロシアの西にあるチェチェン共和国。ソビエト崩壊後から独立をめぐった混乱が長く続いたこともあり、本作の他にも『カフカーズの群狼』『ヴィレッジ・ジャック』などで取り上げられている。
混乱する国内事情と同様、ゴルゴへの依頼人はチェチェン独立派を率いるリーダーの1人、そしてターゲットは彼の弟でチェチェンマフィアのボスという込み入った状況がある。もっともゴルゴにとっては日常茶飯事であり、チェチェンの過去を熱く語る協力者に、「あんたたちは、俺を案内してくれればいい」と言い捨てて協力者の1人を激高させている。
日本の高度な印刷技術の豆知識
日本においてクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス払いが普及しない原因の1つに、現金に対する信用度の高さがあるとのこと。確かに日本のお札には精巧な仕掛けがいくつも施されており、本作でもお札の紙質や彫刻、印刷について言及する場面がある。
それでも登場したイタリア人贋作家に、「ミケランジェロを生んだ、ルネッサンスの国が、猿まねで培った技術に負けるはずは、ない!」と言い切らせたのはどうだったか。単にこの贋作家が日本の浮世絵などで使われていた版画技術の凄さを知らなかっただけなのかもしれないが。
依頼を達成できなかったゴルゴ
本作で見逃せないのはラストシーンだ。私欲におぼれたと思われていたターゲットながらも、実はジハード(聖戦)の達成を願い続けて行動していたことが明らかになり、それを聞いた依頼人である兄は愕然と目を見開く。
他の話では政治や経済で鋭い洞察力をみせるゴルゴ。しかし本作でターゲットの“野望”をつかみきれなかったゴルゴは、依頼に沿ってにターゲットを追い詰めた挙句に射殺している。偽札や印刷機からターゲットの真の目的を見抜くのは困難には違いないが、結果的に依頼を達成できていない点ではゴルゴの誤算と言っても良いのではないだろうか。
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研 修治
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