この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第214巻録録。政権の腐敗を追うマルタの女性ジャーナリストが、パナマから流出した機密文書に政権の不正蓄財を発見する。調査を進めるうち、「トウゴウ」なる奇妙な経歴をもつ投資家の存在が浮上。取材を始めるが……。
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タックス・ヘイブンの闇に迫った女傑の悲劇
2016年に流出し世界を震撼させた、タックス・ヘイブン(租税回避地)の実態に関する機密文書「パナマ文書」。本話はそのタックス・ヘイブンの一つとして知られるマルタ共和国を舞台としており、作中の「ナパーム文書」はお決まりのもじりだが、まさしく爆弾のような影響力に通じるネーミングが面白い。
本話の主役といえるカナリア・ガイヤルド記者も、パナマ文書を頼りに汚職を追及し暗殺されたジャーナリスト、ダフネ・カルーアナ・ガリジア女史がモデルと思われる。自動車爆弾で死亡(※)という最期も同じだが、作中ではその無念は晴らされることになる。
マルタ共和国とゴルゴの意外な繋がり
『メランコリー・夏』や『キャサワリー』でも舞台になったマルタだが、本話では、ゴルゴが当地に会社を所有して私財を運用しているという興味深い設定が明らかになる。
多額の投資で市民権が得られる制度も実在のものであり(※)、ゴルゴが「道具は用意しておいて、邪魔にはなるまい……」と考えてこれに申し込んでいるのも面白い。彼はこうした「道具」を世界各地で持っているのだろう。
領土を追われた「マルタ騎士団」との複雑な関係もポイントだが、本話の騎士団はやり手で、ゴルゴへの依頼を通じて共和国側に揺さぶりをかけている。その対立の行末は定かでない。
いつになく優しい?ゴルゴの態度
マルタという国に思い入れがあったのかは分からないが、本話のゴルゴはいつになく寛大でもある。自身の秘密に迫ろうとしたカナリアにも殺意を向けはしないし、ゴルゴを彼女の仇と誤認した夫のアンソニーが銃を向けてきた際にも、その犯人は自分ではないと教えてやるばかりか、「お前の無念は、晴れるかもしれない……」と直後の仕事を仄めかしてすらいるのだ。
一方、恐れ知らずなのは、ゴルゴを爆殺犯に仕立てようとしたベンクリーである。真の仇である彼らがゴルゴに一掃され、「マルタの騎士」の魂も少しは浮かばれただろうか……。
※出典:ロイター『パナマ文書報道に参加の記者暗殺、マルタで自動車爆弾が爆発』(2017年10月17日)
※出典:BBC NEWS JAPAN『パスポートに付けられた値段 地中海の島国マルタで』(2017年8月25日)
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東郷 嘉博
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