この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第3巻収録。長きに渡り祖国イギリスの極秘情報をKGBに売っていた男・グラストン。そのグラストンが亡命先のソ連で問題を起こし国外追放となったため、MI6はゴルゴにグラストンの抹殺を依頼する。ゴルゴはグラストンが逃亡する際に偽装結婚をしており、逃亡後にグラストンが捨てたとされる妻がいることに着目。MI6の意見を無視して捨てられた妻・ステラを監視するのだった……。
スポンサーリンク
ゴルゴの食事シーンが掲載
1969年9月に発表された『メランコリー・夏(メランコリー・サマー)』は、キャラが固まっていない初期作品ゆえの“揺らぎ”を堪能できる作品である。現在では“無口・無表情キャラ”で通っているゴルゴであるが、本作ではよく喋り、笑っている。またゴルゴの食事シーンは特筆ものだ。
ゴルゴがきちんとテーブルに座って食事をする場面は、50年の歴史のなかでも非常に少ない。本作での食事はフランスパンとコーヒーでの朝食である。他にはラーメンを食べる第37巻『チャイナ・タウン』、中華料理を食べる第104巻『黒い星』などでテーブルに座っての食事シーンが描かれている。興味のある方は一読されたい。
初期の船員コスがかわいい
本作でのゴルゴは船員コスで登場する。ゴルゴの船員コスは第38巻『セクシー・タイガー』に代表されるシャープな印象のものが多いが、初期のゴルゴはずんぐり体型でかわいい。この“ずんぐり船員コス”は昨今人気のブサカワ(といっちゃうけれど)に通じるものがあり、現在のゴルゴからは想像すらできない。
さらに壁からちょこんと顔をだしてみたり、ホテルの女主人のジョークに笑顔で応えてみたりとサービス満点だ。第35巻『神に贈られし物』ではお祭りの射的で遊び、景品の風船を手にするゴルゴが描かれている。このような「殺し屋×可愛さ」のギャップに癒される女性ファンは多いのではないか。
“後払いのヒューム”が初登場
報酬の先払いはゴルゴに依頼する際の絶対ルールだ。しかしながらゴルゴに報酬後払いをのませた(しかも複数回!)人物がいる。それはイギリスの諜報機関MI6のヒューム部長である。本作はそのヒューム部長の初登場話。彼は第19巻『ジェット・ストリーム』、第45巻『ヒューム卿最後の事件』で報酬後払いで依頼をしている。
この事実からするとゴルゴとヒュームの間には強固な信頼関係があるとみてよさそうだ。しかし本作でのゴルゴは「あんたの声を二度と聞きたいと思わなかった」と、ヒュームを唾棄すべき対象として扱っている。『ジェット・ストリーム』までの間にどのような経緯で後払いOKの信頼関係が築かれたのか。そんな視点で作品を読み返してみるのも一興だろう。
この作品が読める書籍はこちら
町田 きのこ
最新記事 by 町田 きのこ (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第70話『ブーメランを持つ女』のみどころ - 2024年4月6日
- ゴルゴ13:第360話『間違われた男』のみどころ - 2021年9月6日
- ゴルゴ13:第40話『マニトバ』のみどころ - 2020年4月1日