この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第130巻収録。元KGBのカレコフは、兄を死に追いやった二重スパイで、現在は死刑囚となっているミッチェルの死刑執行が中止されると聞き、ゴルゴに“ある依頼”をする。一方、カレコフ兄弟とは友人関係にあるCIA職員・スチュワートは、カレコフの追跡と殺害を命じられ苦悩する。CIAとKGB、垣根をこえた男の友情を描く。脚本:国分康一
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一発の銃弾が絡まり合う謎を解く
冷戦時代、東西に分かれて活動していたスパイ達だが、自国の上司より敵側のスパイの方がウマが合い、友情すら育むこともあっただろう。これはそんな事実を思わせるスパイ達の友情物語であるが、同じテーマの『ペイ・バック』と異なり、背後に様々な事情が入り組み、秘密が隠され、後味は苦いものとなる。
おなじみの銃職人・デイブが「戦車でも撃つつもりか」と驚いたゴルゴの特注弾丸は一体何を撃ち抜くのか。一石二鳥ならぬ、一発で二人の息の根を止め、今一人を社会的に抹殺する一石三鳥の神業がスチュワートの追い続けた謎を明かしてみせる。

携わる人にとっても負担の多い死刑執行
日本の死刑執行については、堀川恵子氏著「教誨師」に詳しい。日本は第2次大戦敗戦後、戦犯の処刑が相次ぎ処刑施設が壊れてしまった関係で、かなり長期間死刑囚の刑執行が停止していた時期があった。刑場が新設された後、最も多い年で27人の死刑が執行された。刑の執行は法務大臣の職務であり違法ではないが、この数は異例である。
この作品の執行現場と違い、日本は絞首刑であり、刑の執行に携わる人たちは、死刑囚や自分たちにとって負担を軽減するため日頃リハーサルも行うが、実際の執行時における心身の負担はかなり厳しいだろう。
ミッチェルの死刑執行はどうなる衝撃の結末
最後はあっと驚く結末だが、カレコフのゴルゴに対する「ミッチェルはちゃんと国家に裁かれるべきなのだ。これ以上ない絶望と恐怖を味わって」のセリフに鍵がある。ミッチェルの裏切りにより兄マクシムが激しい拷問の末、生きたまま溶鉱炉に吊されて焼かれたことを思えばカレコフの願いは当然といえる。
今作で最低の人物はキンケイドであろう。自分の犯罪を隠蔽するため、スチュワートを騙してカレコフを始末させようとしたり、刑務所の所長まで抱き込む悪辣さにはあきれる。人間性には西も東もない。最低な奴は何処へ行っても最低なのだ。

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野原 圭

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