この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第157巻収録。元CIAのテッドと元KGBのスラーヴァは、共通の友人・エルンストの墓参りに来たのが縁で、偶然に知り合う。エルンストの思い出話に花が咲き、組織の垣根を越えて友情を通わせる二人。そんなとき発生した籠城事件の人質が、エルンストの娘だったため……。脚本:ながいみちのり
スポンサーリンク
墓参りから始まった人質救出作戦
親や知人の墓参りをしたとき、見知らぬ人が詣でていたら、何となく故人との関係を聞きたくなるのが人情というものだ。かつて一人の男に深く関わった者2人が、その男の墓参りで出会ったことにより、彼への生前の借りを返す、『死刑執行0:01AM』同様、東西スパイの熱い友情物語である。
ゴルゴは貴重な休暇中だったが、スイスに滞在していたのが運の尽き。せっかくの優雅な休日が台無しになってしまった。ゴルゴの狙撃料は高いが、大至急、最高難度、絶対の成功を求められるうえ、休暇中もお構いなしのお呼び出しなのだから仕方ない。

男達の本気の目力に注目
貫禄に満ちた3人の男達の目力が凄い。テッドとスラーヴァが、おやじ狩りよろしくチンピラに絡まれたとき、それぞれがとっておきのナイフを取り出し、その特徴について丁寧な特別講義を授ける場面が出色だ。さすがは昔取った杵柄、生死をくぐり抜けたおじさま達に、チンピラは完全に位負けである。
また2人が、困難な人質救出をゴルゴに依頼する際、しばし沈黙が流れた後、ゴルゴが「やってみよう」という場面はかつて日本の武士が、命に代えても違えることのない約束をするとき、刀や鍔を打ち合わせる金打(きんちょう)を連想させる。
死は喪失とともに再生を構築する
ゴルゴの狙撃に関するスラーヴァの解説が実に興味深い。一発目は優秀なスナイパーなら誰でも可能だが、SPなど訓練された人間以外、銃声に対しては伏せるという本能を利用した二発目は彼ならではだろう。娘は亡父エルンストにより守られたといえる。
金を残すのは三流、名を残すのは二流、人を残すのは一流といわれるが、エルンストが人として一流だからこそ、2人の友人達は手を尽くして彼の娘を救おうと奔走した。そしてそのことがかつて敵同士だった者達の間に新たな友情を生み出す。2人が酌み交わす乾杯の美酒は極上の味だろう。
この作品が読める書籍はこちら


野原 圭

最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日