この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第18巻収録。火盗改方の新任与力・猪子は、花火大会で無作法をはたらく大名のバカ息子にお灸を据える。大名家からのクレームにより、若年寄・堀田摂津守から叱責をうける平蔵。しかし後日、堀田摂津守家中の者が老夫婦に乱暴する現場に遭遇し……。正義漢・猪子の爽やかさが気持ちのいい一編。
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新与力、猪子進太郎登場
小柄ながらも柔術の達人、与力の猪子が初登場だ。実直で正義感の強い猪子は鬼平からの信用も厚いが、若さ故の快活さがいささか不安でもあるな。『殺しの波紋』にて与力富田達五郎が殉職した後に配属されたという経緯だ。
京極備前守からは大きな庇護を受けている鬼平ではあるものの、鬼平を悪く言う者も多いようだ。能に興じる堀田摂津守にも、先の富田達五郎の件を引き合いにさんざん嫌味を言われる。本作は、堀田摂津守が強い興味を持つ“能”を軸に展開されて行くストーリーだぞ。
女性に溺れる中年男性
役宅を訪れた左馬之助は鬼平に対し、野崎勘兵衛の話をする。野崎は高杉道場にて修行をしていた鬼平や左馬之助の先輩に当たる人物なのだが、真面目な性格が故、遊女に溺れて身を滅ぼした男だった。
立派なあごひげを蓄えた老爺となった野崎の貧しい生活ぶりではあったが、そのあごひげを能面に使用すべく買い取るといった話もあるそうだ。あごひげを売買するだけならば問題にもならない訳だが、はて、ひげを所望する堀田摂津守の家臣と鬼平、左馬之助、猪子との激しいアクションシーンが展開されるのだ。猪子の柔術も見ものだな。
30両は何円くらい?
野崎のあごひげ30両。江戸時代のお金の単位、両。現代の価格でいくらなのかがピンとこないものだ。単純に米の値段で比較する事も難しく、江戸時代でも前半ならば1両=約5万円、後半ならば1両=4~5千円とも言われる。
大工の工賃では1両=30~40万円、そばの代金では1両=12~13万円とも言われ、正直なところ良く分からないのだ。1両が何円に相当するかの計算は不可能とまで言われるが、凡そ1両は10万円と仮定してみよう。その場合に野崎のあごひげは300万円という高値になる。
さて、翁の能面を作る目的であごひげが所望されたのだが、翁の能面は他の面と異なる特徴があるぞ。翁の面だけは顎の上下が分かれていて、紐で繋がっているとの事。“切顎”と呼ぶそうだが、野崎のひげも切ってくれたならばトラブルも避けられたかもしれないな。
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滝田 莞爾

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