この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第157巻収録。レア・メタルの産出国であるコンゴ。日本商社の岩國は、日本への安定供給を実現するため、現地での交渉に乗り出すも、現地の武装ゲリラに鉱脈を奪われてしまう。岩國は現地で出会ったゴルゴに鉱脈奪還を依頼するが、なぜかゴルゴは依頼を断るのだった……。
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未知との遭遇にはご用心
とあるコンサートホール「コルタン狂想曲って聞いたことない曲ね。楽しみだわ」観客の期待が高まる。舞台はアフリカ・コンゴ、指揮棒を巡ってミズワ族とマウシオ族が派手に殴り合い、オーケストラのメンバー、日本、ドイツ、アメリカは互いに優位に立とうとそれぞれ勝手気ままに大音響をたてる。
耐え難いほどのすさまじい不協和音に観客が限界となった頃、シャーマンが現れ指揮者2人を蹴落とし、ゴルゴの銃声とともに舞台の天井が崩れ落ち、突然訪れた静寂の中、観客は言葉もなく呆然と口をあけている。そんな光景を連想させる作品である。

シャーマンは究極の名役者
今回ゴルゴはシャーマンまで抱き込んだようだが、これは有効に働いたといえる。アフリカの貧困の原因となっている部族同士の対立だが、実際フランスなどに移住したアフリカ人も部族同士としか交流はないらしい。どの国にも国別に移住者のコミュニティが形成されるのとは対照的だ。
しかし、どの部族にも共通するのはシャーマンへの畏れであろう。ただ、シャーマンも情報化社会への変化とともに、その地位も微妙なものになっているかもしれない。彼らにとっては今回の依頼は地位回復の絶好の機会であり、演技にも気合いが入ったことだろう。
便利の陰に隠れる血で血を洗う争奪戦
トウキョウ・ジャパン、繁華街、電車・車の中、場所を問わず、人々はスマートフォンを手に、道を行き、買い物の決済をすませ、会話やゲーム、映画に興じ、写真を撮ってSNSにアップして、自己承認欲求を満足させる。かたや、スマートフォン、ゲーム依存症などの問題が生じ、対応する専門施設が開設されている。
そのスマートフォンに使われる物質を掘り起こすことは、自然からの一方的な収奪であり、それを巡って人々が血を流し、命が奪われる。かくも馬鹿馬鹿しく愚かな所業を繰り返す人間はいつかその報いを受けるのではなかろうか。

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野原 圭

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