この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第10巻収録。茶処・笹屋のお熊婆さんのところに、臆病者で有名だった高木軍兵衛が十数年ぶりに顔をだした。今は大店の味噌問屋・佐野倉の用心棒をしているという。平蔵は、この軍兵衛が強盗・朱鞘組の面々と密談している現場を目撃。じつは軍兵衛、用心棒のふりをした引き込み役だった……。
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はったりを利かせろ
本所界隈では臆病者で有名であった高木軍兵衛が登場するストーリーだ。なんといっても軍兵衛、勇猛果敢、天下無双、文武両道、とにかく完璧な男なのだ、彼曰くだが。さながら豪傑とも見える立派な髭面から繰り出されるはったりの数々は、多くの人が騙されてしまうほどだ。
鬼平犯科帳においての口八丁といえば軍兵衛を挙げる人も多いのではないかな。その軍兵衛のはったりを楽しむ事が出来るストーリーには「二人女房」、「おしろい猫」などがあり、本作を知っていればなお楽しめるだろう。
得意のはったりで大店に引き込み役として入り込んだ軍兵衛、気の小ささというか性根の優しさが垣間見えるな。それが原因で盗賊団とトラブルを起こした軍兵衛ではあったが、さて得意の口先でピンチを脱する事が出来るのだろうか。
ホラを吹く
軍兵衛のように大はったりをかましたり、嘘や大袈裟で吹聴する事を俗にホラを吹くと言うな。ホラは法螺、つまり法螺貝を吹いてブオォーと鳴らす楽器のようなものだ。武将が吹いたり、山伏が吹くイメージを持つ方もいるだろう。では何故、大袈裟や嘘をつく事をホラを吹くと表現されるようになったのだろうか。実は二つの説があるぞ。
法螺貝は見た目に反して予想外に音が大きい、という事から予想に反した事、つまり大袈裟という形に転じた説。そしてもうひとつは法螺とは仏様の説法の事で、本来は仏様が法螺を吹いていたにも関わらず、凡人が法螺を吹く格好だけを真似たという話から来ている説だ。
表面だけ真似ても中身が伴っていない、つまり言行不一致の事をホラを吹くと呼ばれるようになった説だな。時としてホラを吹く事は、人としての信用を一気に失いかねないぞ。ホラを吹くのもほどほどに。
はったりの通用しない鬼平
鬼平は軍兵衛のあらゆる話に対して、はじめて会った時から懐疑的に思っていたようだ。さすがは修羅場の数々を潜り抜けてきた鬼平、軍兵衛程度のはったりでは騙されないのだろう。ともあれ、良心の呵責から木村平九郎こと鬼平に相談を持ち掛けた軍兵衛。
結果的には火盗改メによる盗賊団捕縛へとつながった為に、どうやら本件に関してはお咎め無しだったようだ。火盗改メに現れた軍兵衛が鬼平から褒美の言葉を賜る事になるのだが、どう見ても鬼平は木村平九郎な訳だな。正体を明かさずとも、鬼平の言葉として軍兵衛は肝に銘じた事だろう。
これを機に軍兵衛も態度を改めて、ホラ吹き人生を終わりにして欲しいものだが……。お熊婆さんではないが、老婆心ながらも軍兵衛とすず殿の恋愛の行方も気になってしまうな。なかなか個性的なキャラクターである軍兵衛のストーリー、にやりと笑ってしまう場面も出てくる本作はお勧め出来る作品だぞ。
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滝田 莞爾
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