この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第22巻収録。飲み仲間の藤田彦七から相談をうけた忠吾。三年前に姿を消した妻・おりつから、助けを請う旨の手紙をもらったという。一方、平蔵は過去に取り逃がした盗賊・入間の又吉を発見し尾行する。又吉の隠れ家には女がいて、「おりつ」と呼ばれていた……。魔性の女に翻弄される哀しい男の性。
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薄給の旦那はつらいよ
木村忠吾が主役で、本作と『雪の果て』が続編となっているストーリーだ。忠吾と心を許し合っている飲み仲間、藤田彦七との関わりを描いた作品で、もちろん忠吾にフォーカスが当てられている。
同心としての忠吾といった描写よりも、私生活での忠吾の姿勢や態度が克明に描かれているぞ。これは木村忠吾ファンにとっては必見のストーリーだろう。何やら家族を捨てて逃げた、藤田の前妻から連絡があったようで。どうしたものかと相談をした相手が、よりにもよって忠吾だったという話だな。
しかし忠吾、こうした時には意外としっかり者という事が分かって良かった。これも日ごろ厳しくつっついてくる鬼平の教育の賜物だろうか。
手習いの師匠
藤田は読み書きを教えて収入を得ているようだが、果たしてどのように。江戸時代には商家に子供を預ける“丁稚奉公”という制度があった。農村の子などが商家に就業するのだが賃金は無い。しかし衣食住の提供と共に、子供たちには読み書きや算盤などの教育を受けさせていたのだ。
親としては食い扶持を預かってもらえるだけではなく、子供の将来に繋がる技術を習得させて貰える訳で、江戸時代では非常に人気が高かったそうな。商家は奉公人への教育をする責任があったからこそ、藤田のような現代で言うフリーランスの先生も活躍出来たのだ。
子供を送り出してタダ働きさせるなんてけしからん! とも言われそうだが、立派な商人として育成をする教育的側面も強かった訳だ。今とはだいぶ勝手が違うと見受けられるな。
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燻ぶった炎が燃え上がる
古今東西、男女の気持ちという物は不可思議なものだ。なぜ家族を捨てて別の男を選んだ女性に、藤田はこうも情を掛けてしまうのだろうか。
やはり藤田は再婚をした後も、前妻への想いが立ち切れなかったのか。
となると、再婚をした理由は娘の為という話になってしまう。うーむ、それはそれで再婚相手にも失礼な訳で。鬼平は前妻を魔性と評したが、藤田も情けない一面があるなと思ってしまったぞ。
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滝田 莞爾
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