この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第93巻収録。スキャンダル専門の凄腕カメラマン・ランスは、雑誌編集長との会話で「もう好奇心が満足した」と語り、引退を匂わせる。だが編集長は「いくら君でもスクープ不可能な人物がいる」とゴルゴ13の顔写真を取り出した。ランスはゴルゴの狙撃現場のスクープを最後の仕事にしようと決心するが……。
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ゴルゴで一儲けを企む小物の末路は……
スキャンダル・カメラマンのランスがゴルゴの狙撃シーンを写真に収めようとするという、シンプルな筋書きの本話。67巻の『サギ師ラッキー』しかり、小物がゴルゴをネタに一稼ぎを企むエピソードには、きっと上手くいかないことが分かっているからこそ逆に応援したくなるような、妙なハラハラ感がある。
ラストの一コマが、ゴルゴに気付かれたと知って震え上がるランスの表情で締めくくられるのも味があり、この直後に彼が辿ったであろう末路を思うと「ご愁傷さま」という感じだ。だから情報屋はゴルゴに近付くなと警告してくれていたのに……。
ゴルゴ相手に策を弄するのは逆に命取り
結果的にゴルゴには遠く及ばなかったとはいえ、本話の主役であるランスも、パパラッチとしてはかなり一流の腕を持っていたことは間違いない。実際に多くの著名人のスキャンダルをモノにしていることに加え、狙撃と撮影の本質を同じと捉えて、標的の部屋の間取り図からゴルゴの狙撃コースを割り出してみせる推察力はなかなかのもの。
しかし、ゴルゴの狙撃角度を限定するために爆破予告で警察を呼び出したまではいいが、それで逆にゴルゴの警戒心を強めてしまったのは間違いないだろう。小物が策を弄しすぎても命取りにしかならないというわけだ。
ランスを引き止めただけか、それとも?
短編作品にも、長編に負けず劣らずの濃い登場人物が出てくることが多い『ゴルゴ13』。ランスも忘れがたいキャラだが、彼と懇意にしていたパトリー編集長も結構な曲者である。もう飽きたのでカメラマンを引退したいと語るランスに、編集長は「この男だけは、さすがの君でも難しいだろうがね……」と言ってゴルゴのスクープを持ちかける。
敢えて挑発してランスの自尊心をくすぐることで、引退を思いとどまらせようという計らいもあるだろうが、一方では、彼がゴルゴに始末されてしまうなら、それはそれで構わないと思っていたのかもしれない……。
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東郷 嘉博
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