この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第1巻収録。第一話からの続編といえる内容。前話で取り逃がした“小川や梅吉”の捕り物劇が描かれている。平蔵の竹馬の友・岸井左馬之助、密偵・相模の彦十が初登場。平蔵と左馬が思いを寄せた女性・おふさの転落人生とは?平蔵が自らの出自と放蕩無頼の青春時代を回想するシーンも興味深い。
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平蔵いよいよ本領発揮
「ワルも、見込みのあるやつは生かして使うのが、俺の主義だ」。小房の桑八に対してこう語りかけるコマは決して大きくないが、ここの鬼平の表情はぜひ見て欲しい。
女子供すら皆殺しにするような押し入り強盗、作中でいう急ぎ盗(ばたらき)に参加しながらも自身は誰一人殺生しなかった小房の桑八を見込んでのセリフだ。
小房の桑八への信頼と優しさ、尊重が感じられる穏やかなまなざしを小さなコマと短いセリフだけであらわされている。劇画版ならではの魅力が判るシーンだ。
鬼平の強力な仲間と若かりし頃
今回のストーリーは若かりし頃の鬼平の回想が多く含まれる。そのなかで偶然の再開を果たすのが同じ剣術道場に通っていた岸井左馬之助と相模無宿の彦十だ。
彦十は単に相模の彦十と呼ばれる。彦十との出会いは喧嘩というのだから、本所の銕のワルぶりと人望が垣間見える。彦十との初対面の喧嘩で平蔵は刀を空々しく褒めて気をそらし、その隙に攻撃するという、言ってしまえば姑息な手を使っている。
だがこの手段を選ばない姿すら、平蔵が単なる奉行様ではないと垣間見えるようだ。姑息なだけでも、正直なだけでもなく清濁併せ飲む度量があることが伺えるワンシーンだ。
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テレビドラマと劇画の共通点と違い
鬼平犯科帳は時代劇としてテレビドラマ化もしていて、こちらも時代劇ファンからの人気は高い。時代劇でありながらエンディングテーマにジャズが使われているなど、普通の時代劇とは一線を画しているのも人気の一因だろう。
劇画版は当然音こそ実際にはないが、劇画版を読んでいると不思議とBGMや効果音が聞こえてくるような気になる時がある。それだけさいとう氏の絵に臨場感があるのだ。
劇画版の殺陣シーンではスプラッタにならない程度に血しぶきが飛ぶ。これはテレビではほぼ見られない演出だが、劇画でモノクロの血が飛べば画面が引き締まり、読者としては緊張感を得られて良いものではないだろうか。個人的には、このモノクロの血しぶきがある殺陣が好きで劇画版を読んでいるところがある。
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大科 友美
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