この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第31巻収録。普段は貸本屋として活動している盗賊の友蔵。色男の友蔵は薬種問屋・万屋の女房をたらしこみ、押し込みに利用しようと企む。しかし万屋の主・万屋小兵衛は、驚愕の過去をもつ曲者だった……。友蔵と相棒の七之助が、小兵衛の手のひらの上で踊らされる描写が笑える一編。
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春の風物詩は梅とあいびき?
東京都文京区にある湯島天神。都内では墨田区にある亀戸天神と並んで有名な天神社で、国立市にある谷保天神と合わせて関東三天神とすることもある。
いずれも受験の時期になると学生達やその家族でにぎわう場所だ。さらに天神社にはつきもとなる梅の名所として有名なことから『一本眉』『掏摸戻し』などでも、初春のさわやかな光景を描いている。
本作の冒頭では見開きの上半分を大胆に使って富士山を、下には湯島天神の社殿や門前町を描いた後、一枚めくると茶屋でのあいびきを描いている。春に発情するのは犬猫ばかりでは無いようだ。
盗人の手助けをする平蔵達
今回の話の出どころは元は盗賊一味だったものの、その後は平蔵の手下として働いている舟形の宗平だ。
五郎蔵やおまさと同居している宗平に助っ人の話が持ち込まれたことから、五郎蔵や粂八、そして平蔵に加えて、同心の木村忠吾や小柳安五郎までが浪人のふりをして強盗の手助けをすることになる。
『富の行方』『一本眉』『雨乞い庄右衛門』などでも平蔵達は手助けをかって出ている。腕も度胸も満点の鬼平が仲間になれば、「いざという時も間違いのない事で」と宗平爺さんが言うのも当然だ。つくづく平蔵が悪の道に走らなかったことを幸せに思う。
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盗人を引退した老人の活躍
平蔵達が盗賊を未然に防いで終幕となればいつもの展開だが、押し込み先の主が元盗賊の猿川の小兵衛だったことから話が変わってくる。
「わしの勘ばたらきも、まだまだ捨てたものではないわえ」と思う小兵衛は当初から異変を察知していただけでなく、巧みに撃退もしている。
『穴』の帯川の源助や『おみね徳次郎』の伊賀の音五郎のように、静かに余生を送っている盗人達は老いたりと言えども見事な手際を見せている。
物語の最後に平蔵が、「ああいうのが“真の盗賊”という奴だ……俺が若い頃には、まだだいぶ残っていたが」のつぶやきには実感がこもっている。
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研 修治
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