この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第21巻に収録。火盗改方の同心・寺田金三郎は、盗賊一味に同じく同心だった兄を殺された過去を持つ。兄の事件が迷宮入りして一年。金三郎は事件の真相と犯人を知る女・おせつと出会う。彼は単独での捜査を開始するが、盗賊一味は金三郎を殺害すべく剣客を差し向ける……。
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美男の兄弟
兇賊に殺害されて殉職した同心と、役目を継いだその弟が紡ぐストーリーだ。弟の寺田金三郎は傍目から見ても良い男で、更に剣術の腕前もある。木村忠吾は殺害された寺田同心と懇意にしており、色男と兎面の比較も楽しい部分だ。何やら金三郎の行動には不可解な点があって、彦十の勘働きが冴えわたったな。
金三郎は傷を負いながらも命までは取られずに済んだ訳だ。鬼平が助太刀にて同心を助けるという展開に繋いだ、彦十の第六感には感服するぞ。剣術と男女のストーリーが至る結末まで、全てを通して楽しめる作品だ。
いろいろな剣術の流派
寺田金三郎は剣術の達人との事で、その流派は念流、腕前は免許皆伝とある。念流といえば鬼平犯科帳にも『霧の七郎』などで登場する馴染みの流派だ。寺田は念流を若くして極めた凄腕という事だな。その達人に手傷を負わせたという事は、作州浪人、矢島孫九郎の実力も相当な物だと分かる。
作州とは岡山県にあった旧国名で、作州浪人といえば宮本武蔵が著名だ。剣術を知らずとも色々な流派がストーリーに入り込んでいるので、知らぬ間に流派を覚えている。なんてのも鬼平犯科帳の魅力のひとつかもしれないぞ。
二天一流vs鬼平二刀流
作州浪人と鬼平との一騎打ちがしっかりと描かれている作品だ。それもそのはず、剣術の達人たちがひしめくストーリーなのだから。非常に珍しい鬼平の二刀流はぜひ見るべき姿だろう。過去には同心が女盗賊と関係を持ってしまい、様々な不祥事として扱われて来た。『おしま金三郎』では同心の身分を失う事になった訳だが。さて金三郎、はて。
同じ金三郎という名前で、同心が女盗賊と関係を持ったのは偶然のようだ。鬼平からの厳罰が下らなかったのは、やはり“いろおとこ”だからであろうか。一方で兎面の同心はいつでも不細工さを嘆いては、顔が膨れっぱなしだったようで。こういった対比的な描写もあって、鬼平犯科帳の楽しさは底なしなのだろうかな。
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滝田 莞爾
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