この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第7巻に収録。おとり捜査中に囚われの身となった密偵・おまさ。平蔵は敵のアジトに単身乗り込むが、そこには薩摩示現流の凄腕・赤星玄蕃が待ち構えていた……。第五巻『兇剣』につぐ、平蔵の絶体絶命エピソード。おまさはこの回が初登場。おまさの情念深さがよく描かれている。
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おまさを救うべく
鬼平犯科帳シリーズに多く登場する密偵の中でも、女性の密偵といえばおまさの名が挙がるだろう。おまさの初出エピソードで、かつ平蔵とおまさの関係性もしっかりと描写されているぞ。幼かったおまさが鬼平の密偵として仕事をする中、おまさの素性がバレて悪党どもに拉致された後の場面から物語は始まる。火盗改メに密告したとしておまさが連行される最中、その場面を発見した鬼平はおまさを救い出そうとする。
本来ならば鬼平単騎であろうとも悪党からおまさを救えただろうとは思うのだが、副長と呼ばれる剣客の登場によっておまさは連れ去られてしまうのだ。薩摩示現流の剣客と鬼平の息詰まる立ち合いこそ北町奉行所の登場によって決着を見る事はなかったが、この一騎打ちは後の展開にも大きく影響してくるぞ。
立ちはだかる薩摩示現流
おまさの命を救うために、単身切り込む事を決意した鬼平の心の強さには感服するだろう。そして悪党どもを次々と一刀両断し、刀の錆として行く鬼平の剣術にもほれぼれする。多勢に無勢とは分かっていようとも、その分の悪さを乗り越える鬼平の立ち回りは一見の価値ありだぞ。取り巻きをズバズバとなぎ倒していく鬼平の前に現れたのは、やはり剣客の副長であった。
長谷川平蔵がその奥義を極めた一刀流と、二の太刀要らずとも謳われる薩摩示現流との一騎打ちは息をのむ事、請け合いだ。どのように決着へと至るかは敢えて書かないでおくぞ。ぜひとも本編でその決着を見届けて欲しいのだが、剣術の技能だけではなく誇り高き剣客のプライドを体感してほしいのだ。正義vs悪党という立場ではなく、剣客vs剣客としての激突を味わう事が出来るのもまた、鬼平犯科帳の魅力の一つではないだろうか。
鬼平が密偵を思う心
絶体絶命の窮地を切り抜けた鬼平と、救い出されたおまさを見て思う事がある。密偵、つまり手下ならばどのようになろうとも関係ない、と思う人間が多い中でも長谷川平蔵たる人物はその思いは一切ない事が良く分かったぞ。おまさが昔からの知り合いだから、ではないのだ。
密偵として働いてもらう以上は、鬼平ですらも自らの命を賭して共に働くという強い気持ちが見て取れないだろうか。金さえ払えばあとは知らぬ素振りがまかり通るような現代において、鬼平犯科帳は痛烈なアンチテーゼとして我々に問いかけているとさえ思うのだ。鬼平犯科帳ワールドを垣間見るには絶好のストーリーに仕上がっているお勧め作品だぞ。
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滝田 莞爾
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