この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第49巻収録。ある日、佐嶋は暴漢に襲われた少女・おけいを助ける。おけいには毎月仕送りをしている男がいて、その男の正体は本格の盗賊・金鯱の宗兵衛だった……。久々に与力・佐嶋の活躍がみれる一編。また、長谷川家の養女・お順が久々に登場するレアなエピソードでもある。
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酒に目がない筆頭与力
普段は寡黙ながらも、内に秘めたる悪党捕縛への情熱。平蔵の部下の中でも、最も信頼をしている者が筆頭与力の佐嶋忠介だ。年齢こそ平蔵より若干上ながらも、互いに信用をしているからこそ酒を酌み交わす事も出来るのである。
時として平蔵の留守を預かる立場にもある筆頭与力の佐嶋が本作の中心人物となる。佐嶋が活躍するエピソードには『消えた男』『むかしの男』などの人気作品も多く、鬼平犯科帳の登場人物の中でも隠れた人気のあるキャラクターなのだ。実はこの佐嶋、酒豪とも噂されるほどの酒好きで、佐嶋と酒にまつわるエピソードも『蛸足の庄兵衛』などで見る事が出来るぞ。
江戸のうどん文化
蕎麦は関東、うどんは関西。とイメージする人も多い人気の麺類ではあるが、実は江戸時代前期には麺類としての蕎麦は確立されていなかったのだ。うどんの歴史は更に古く、江戸市中でもうどん屋が多くみられたらしい。
蕎麦が麺類として登場すると、江戸でも爆発的にそば屋が増えていったという記録も残っている。それでもうどんの人気が衰えた訳ではなく、地方にて食される様々なうどんは江戸市中でも人気の食べ物だったようである。
本作のおけいが名古屋の小父さんを待ち望む描写から推測するに、こがね屋の名物である味噌仕立てのうどんは“名古屋”繋がりで登場したと見るべきだろうか。
天晴、本格のお頭
本格の盗賊は時として手下が掟を破り、その尻ぬぐいをする描写が登場する。盗みに入った店の者を傷つけた手下は破門をされる事が多いのだが、やはり破門をされたとて悪党は美味しい汁を吸おうと暗躍しているのである。
本作の手下も小悪党ではあるが、本格の盗賊頭が小さなほころびからお縄になるパターンなのだ。しかし本格のお頭らしく、最期まで本格の盗賊であったと評価出来るのではないだろうか。本格の美学を垣間見たいのであれば、本作は見どころの多い作品だと思うぞ。
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滝田 莞爾
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