この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第32巻収録。新商品が評判で、増収増益の化粧品屋・壺屋。三代目の菊右衛門は、裏では金貸しを営むなど悪い噂が絶えない。
その壺屋から金を盗み、後日、そっくりそのまま戻しておくという洒落た真似をする賊があらわれた。犯人の正体はなんと……。
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鬼平がお目こぼしした鍵師
盗賊には容赦のない平蔵ながら何が何でも捕まえるわけではなく、『おみね徳次郎』に登場する伊賀の音五郎、『正月四日の客』での亀の小五郎らのように見逃すことがある。本作に登場する助治郎もお目こぼしを受けた一人。
本業の鍛冶師のかたわらで盗賊に蔵などの鍵を複製する作る鍵師(かぎし)として手助けをしていた助治郎だったが、『雲竜剣走る』にて大がかりな捕りもののどさくさに紛れて逃げて行ったところを、平蔵は追わずにすませていた。そんな助治郎が江戸に舞い戻ったとこを、五郎蔵に見つかったことで事件につながっていく。
70歳近い年寄りの健脚
平蔵から助治郎の年を聞かれた五郎蔵は、「もう七十に近いと思いますが、元気なものでしたよ」と答えており、故郷の近江・八日市(現在の滋賀県八日市市)から旅をした姿で描かれている。
現在なら東海道新幹線に乗って2時間ほどで行き来できる距離だが、当時の交通手段と言えば馬や駕籠くらいで庶民は歩くよりない。近江から江戸までは一直線でも350キロメートルほど。
もちろん東海道や中山道に沿って歩けばそれ以上となるだろう、途中には箱根の山のように上り下りもある。70歳近い老人が歩ききったのは驚きながら、当時は普通のことだったらしい。
掘った穴を罰として埋める
本作の題名となっている『穴』は読めば一目瞭然。隣の家との間に掘られた穴が通り道になっていて、大金や茶碗を盗んだり返したりと騒動の元になっていた。
しかしごく近い隣家との間とは言っても、ひと一人が通り抜けられる穴を開けるのには相当苦労したのではないだろうか。舞台となっている神谷町(現在の東京都港区)近辺の地盤も気になる。穴を掘っている最中に生き埋めになった危険性もありそうだ。
平蔵は助治郎と帯川の源助を罪に問わない代わりに穴を埋めるよう命じている。彦十ですら同情しそうになる罰は二人の骨身にしみたはずだ。
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研 修治
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