この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第27巻収録。密偵の彦十が、昔の盗賊仲間・網虫の久六と再会。助ばたらきを要請される。久六の苦労話に同情した彦十は、平蔵に内緒で助ばたらきを決行するが……。彦十の若かりし頃のエピソードも飛び出す、彦十ファン必見のエピソード。
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相模無宿の彦十
数多い鬼平の密偵の中でも、抜群の存在感を示す彦十が本作の中心人物だ。鬼平が本所の鬼銕を名乗っていた頃、同じく本所界隈で顔を利かせていたのが相模無宿の彦十。喧嘩で始まった二人の出会いから、どのようにして鬼平と彦十が心を通わせていったのか。鬼平ファンには堪らないストーリーが描かれているぞ。
鶴の忠助や、若きおまさも登場するならば是非抑えておきたい作品だろう。その彦十が昔馴染みの盗賊から助働きを頼まれる事からストーリーが展開する。人情味溢れる彦十の心は火種となり、どのような事件へと発展するのだろうか。
鬼の霍乱
根城にしている五鉄の二階で彦十がうずくまっていたのは、どうやら飲み食いのし過ぎのようだ。回復して出掛ける彦十を気遣って、三次が霍乱の心配をしていたな。霍乱というのは病気の事で、今の言葉で言うならば熱中症が近いだろう。
江戸時代には今よりも温度が低く、住居も風通しが良かったという。それでも熱中症は身近な病気だったのだな。病気知らずの健康な人が体調を崩す事を“鬼の霍乱”と表現するが、季語は夏である事からも夏に頻発した事だったのかもしれないぞ。さて、彦十が霍乱を起こしたならば、鬼の平蔵はどう見たのだろうかな。
過去に捨てた女の影
昔の盗賊仲間が語るエピソードは、あまりにも彦十の心を捉えてしまった。過去に捨てた女性の事が自らの胸中にあるからこそ、彦十は悪事に協力する事になったのだろう。しかし火盗改メの仕事をする者として、盗賊稼業に身を落とす事はあってはならなかった。それがいかに昔馴染みで、気心の知れた仲間であろうとも。
情にほだされた彦十を救うべく画策する密偵たちだ。鬼平や密偵たちが総出で、相模の彦十を助けるべく奮闘する姿が描かれているぞ。いかに鬼平が密偵たちを信頼しているのか、ぜひ本作を読んで体感していただきたい。
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滝田 莞爾
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