この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第49巻収録。武家屋敷だけを狙う盗賊団が出現。被害品がお上からの拝領刀や、家宝の茶碗であったため、秘密裏に捜査を開始する平蔵。被害者の屋敷で働いていた女中を疑う平蔵は、おまさを送り込み確証をつかむ。しかし、その女中はおとりで、一味の標的は他にあった……。
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武家屋敷を狙う盗賊
鬼平犯科帳シリーズには大身旗本や大商家など大きな金蔵を持つ家を狙う盗賊が登場する。非常に大がかりかつ大胆な犯行を繰り広げる訳だが、これは必ずしも大金だけが目当てではないのだ。
本作では拝領刀を盗まれた事を理由に盗賊の被害を報告しなかったが、これは管理の不備や監督不行き届きなどの名目にて処罰される可能性があっての事と推測される。同じく大商家であれば取引先からの信用問題にも繋がり兼ねない為に、届け出をしない家もあったらしいのだ。被害者が金品だけではなく、その責任問題にも問われる事になる時代だったのだな。
江戸時代の人材紹介
口入れ屋をはじめとする手配師とよばれる職業が多く出現した背景には、大名の参勤交代制度が理由の一つとされているのだ。大名行列には多くの人員が必要となるのだが、それらをお抱えの手下で賄う事は出来ない。なので一時的に奉公人を確保する為に、臨時で雇い入れた経緯があるのだ。
同じく参勤交代時の武家屋敷にも臨時の奉公人が必要となり、その際に大名家が利用したのが口入れ屋という訳である。口入れ屋は武家奉公人などを主に扱う商いで、期間限定の中間や小者を紹介、斡旋する業者と考えて良いだろう。
労働者搾取?雇用促進?
手配師は多岐に渡る職業の紹介、斡旋を行っていたが、現代では人材派遣業や人材紹介業に近い職業と言えるだろう。仕事を求める市民に対して仕事を紹介する事業について、雇用を促進して困窮者の救済をする大義名分を持つ反面で、その紹介料や手数料などから労働者搾取や貧困ビジネスと揶揄される側面も持ち合わせる。
これは江戸時代に限った事ではなく、現代に至るまでその両面の属性を持ち合わせた職業である事は否めない。手配師という括りで考えるならば、不法入国者を違法な現場に斡旋する事によって莫大な利益を上げる者もいる。これはイリーガルな組織の場合が多いのだが、江戸時代からも市民の反感を買いやすい職業であった事からも、現代においても法律を順守させなければならない職業の一つかもしれないな。
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滝田 莞爾
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