この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第6巻収録。平蔵の出張中に、久栄の元彼・近藤勘四郎が長谷川家の愛娘・お順を誘拐した。黒幕は一体だれなのか?筆頭与力・佐嶋が指揮を執る過激な救出劇は必見。平蔵と久栄の結婚初夜の情景も、この回で描かれている。
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平蔵と久栄のなれそめと過去
平蔵の妻・久栄には処女を強引に散らされるという哀しい過去があった。しかしその過去を知ったうえで、平蔵は久栄を嫁に娶り、更にその過去には一度として触れることがないという。
平蔵は漢の中の漢だが、夫婦生活でも漢気を見せられる。現代とは比にならないほど婚姻に純潔を求められたであろう時代、久栄がどれだけ平蔵に救われたかは想像に難くない。
平蔵と久栄は仲睦まじい夫婦だが、若いころには平蔵の放蕩さに悩まされることが多かったというエピソードも事あるごとに書かれる。それでも久栄が平蔵を信じ、愛し続けたのは、もちろん時代もあるが夫婦の始まり方が平蔵の愛そのものだったからだろう。

怒りで零れる本音
「わ、私はこのように美しい人妻になっているのに、とでも言いたいのかっ!?」近藤勘四郎が久栄に袖にされた末に吐いたセリフだ。近藤の人間性自体は何一つ理解できないが、彼が怒りに任せて叫んだこれは本音だろう。
近藤を強く睨みつけ、気丈に振る舞う久栄の顔かたち、立ち居振る舞い、すべてが美しい。特に無言で見つめ合うページ、斜め右から見た顔は形のいい唇をきつく結び、目元に力を入れている様がよく分かって美しいと思う。
その上の近藤が下卑た笑いを浮かべているのと対極的だ。ふたりの顔を見比べると、歩んできた人生の違いまでもが判るようだ。
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お順がよく登場する劇画版
鬼平ファンにとって言うまでもないことだが、お順は平蔵夫妻の本当の子ではない。むしろ実父は盗賊だ。しかし久栄はお順の行方を心から案じて憔悴し、再会の際には嬉し涙を零しお順を抱きしめる。
血よりも濃い絆を築いているのが伝わってくる。実はお順は原作では1作目のお順の生い立ちに関わる回とこの回で登場するくらいで、登場回数は決して多くない。
対して劇画版ではことあるごとに久栄とともに登場し、平蔵が何くれとなく気にかける様子も見られる。子どもが出れば漫画の絵面が和むというのもあるだろうが、さいとう氏がお順という小さな子どもを気にかけている証左のような気がして何だかくすぐったく、嬉しい。

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大科 友美

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