この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第178巻収録。イラク戦争後、日本の企業も石油開発に参入することになった。他社に先駆けて参入枠を確保した五領石油は、日本独自の油井開発に心血を注ぐ佐嶋を現地に派遣する。しかし、佐嶋率いる調査隊が現地の武装ゲリラに拉致される事件が発生し……。脚本:横溝邦彦
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延々と混乱が続くイラク
本作の舞台は中東のイラク。「イラン?イラク?どっち?」と分からない人も多そうだが、1990年にサダム・フセイン大統領の命令でクェートに侵攻したのがイラクだ。本作発表時の2009年は湾岸戦争もすっかり終わっており、選挙後にシーア派の政権が発足し、国家として再独立を果たした時期。
その後、2010年には駐留していたアメリカ軍が撤退したが、2013年頃になるとISIL(イスラム過激派組織)による活動が起こってくる。そうした中での油田開発がどれほど困難を極めるか。国際情勢に疎い人でも想像がつくだろう。

日系アメリカ人に変装したゴルゴ
銃やナイフ、夜の技巧に習熟するゴルゴだが、変装技術には疑問符がつく。帽子をかぶっただけ、メガネをかけただけ、あごヒゲを付けただけなど、「意味があるの?」と思わせる変装が多い。アメリカの石油会社の技師ジョン・トウゴウと名乗ったゴルゴは、鼻の下に大き目の付けヒゲをして登場する。
アラブ辺りは成人男性であればヒゲを立てるのが当然らしいが、筋肉を隠しきれないスーツ姿と合わせて異様な風体。その後に油田調査に同行したゴルゴは、分析した映像から原油の質や噴出量も推測してみせる。変装はともかく知識や理論武装は完璧だ。
ネオコンの予測は当たるか?
本作でターゲットとなったのは、交渉人として暗躍するアラブ系アメリカ人のディクソン。そんな彼の口からネオコン(アメリカの保守グループ)の将来予測や目的が語られる。
それによると近い将来にイラクでは再び戦争が起こり、そのために日本やロシア、中国までも引き込んでいるとのこと。するとイラクにおけるゴルゴの再活躍もありそうだが、約10年たった現在、小競り合いはあっても戦争は起きていない。しかし2016年発表の『The Great Game』のように石油利権をめぐった争いはある。ゴルゴの出番はいつだろうか。

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研 修治

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