この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第135巻収録。ペンタゴンの研究官・ポートは、GPS衛星からの電波を利用してタンカーを乗っ取ることに成功する。FBIの活躍によりボートは射殺。事件は一件落着したように見えた。が、船の機関部が爆発を起こし、今にも原油が海に流れだそうとしていた。原油流出の危機を救うべく、ブリーザ・バルブの狙撃を請け負ったゴルゴだが……。
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日本列島ドロドロ事件勃発の危機
この、音まで聞こえてきそうな、まがまがしい漢字の並ぶ劇画が売れるとすれば、ゴルゴシリーズくらいだろう。このドロドロは昼メロのそれとは大違い、文字通り石油のドロドロである。
狙撃の状況も含め、事件の発端から解決まで、ストーリーは至ってシンプルだが、その背景は複雑で、もし今回ゴルゴが東南アジアではなく、遠くアフリカなどでお仕事中のために間に合わなかったら、日本列島はタンカーから漏れ出た石油に囲まれて、漁業や観光業は壊滅的な打撃を受け、物流は滞り、経済は破綻し、飢餓に苦しむ事態に陥っていたかもしれない。
考えたくないが直視しなくてはならない問題
タンカーの事故で油が流出する度に、水鳥など海の生物の真っ黒な油まみれになった姿がテレビに映る。心を痛めると同時に、今やこの物質がないと生活が立ちゆかなくなっている現状に歯がゆい思いも沸き上がる。
しかし、本作を読むと、我々日本人は常に油まみれの生物になってしまう危機のうえに生活していることがわかる。タンカーの航行にはそれ自体運河の通行等も含め、莫大な経費がかかるとともに、常に海洋汚染という多大なリスクもはらんでいる。この事実をふまえれば、我々はエネルギー問題を直視すべき時期にきているのは間違いない
困難なミッション遂行後の一服は極上の味
ミッション遂行後のゴルゴの表情が良い。今回は海上での揺れ、視界を遮る煙と熱という悪条件を除けば、ゴルゴにとって狙撃の難易度はそれほどでもないように思えるが、サポートの兵士は神業に感激している。
その彼を前に「まあ、俺にしてみれば中の下レベルの難度だな」とでも思っているような顔で、満足げに葉巻をふかしている。葉巻はもちろんキューバ産だろうが、こんな所にまでお気に入りの葉巻を携行しているのは、さすがプロのたしなみ、といったところだろうか。それにしても、軍用ヘリの中で喫煙を許されるのはゴルゴだけだろう。
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野原 圭
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