この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第156巻収録。イラクへの武器流入ルートを突き止めたCIAは、密輸の拠点を破壊することを計画する。しかし、この組織はサウジアラビアが金を出している超国家的組織であったため、迂闊に手を出せない。CIAは表向きは事故だと装って工場を破壊するようゴルゴに依頼する……。脚本:麦丘健二
スポンサーリンク
イラク現代史を立体的に理解できる
サダム・フセインが拘束された直後のイラクの混乱を適度な情報量で端的に描いている短編だ。今エピソードに限らず、イラク情勢を描くエピソードは多く、日本人にはよく知られていないイラク現代史を立体的に理解する教材となる。
イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争と時系列的な各段階で様々なエピソードがある。スケールの大きなものが多く、教材とする以前に十分に楽しめる作品であることは言うまでもない。『人口知能AIの誤算』『Kデー・カウントダウン』『アム・シャラーの砲身』『魑魅魍魎の井戸』など、どれから読んでも楽しめるし、ためになること請け合いだ。

仕事の構図は簡単でも構成力がすごい
今エピソードのゴルゴの仕事の構図は簡単だ。
- スホベイを待つ
- 工場の窓をリモート爆弾で破る
- 工場内を粉塵で充満させる
- 着弾したら発火する花火弾丸で粉塵爆発を誘引
難しい狙撃技術は不要である。難しいのは24時間警備と事故に見せかけるという条件くらいか。構図も条件も簡単だが、誰にでもできる仕事かと言えばそうでもなく、スホベイという気象条件を利用すること、粉塵爆発という科学現象を駆使することにした構成力がすごい。ゴルゴが技術が高いだけの狙撃屋でないことがよくわかる。なお粉塵爆発は『穀物戦争 蟷螂の斧』でも用いられているので参考にされたい。
調達屋は重要なバイプレイヤー
調達屋はエピソードの魅力を大きく左右する重要なバイプレイヤーである。今エピソードの調達屋は「裏社会の便利屋」を自称しているがユーモラスな憎めないキャラクターだ。バイプレイヤーとしていいセン行っている。
他の調達屋としては初期作品で“調達屋”と称されるさえない風体の男が『狙撃のGT』『最後の間諜ー虫ー』『ミステリーの女王』などに登場。『ガリンペイロ』では“表社会”の兵器会社からジープやランチャーを手配している。いずれにしてもゴルゴに絶対的な調達先はなく、仕事をする先々で適せん調達をしているようである。あなたの好きな武器調達屋はどの作品に登場しただろうか。

この作品が読める書籍はこちら

片山 恵右

最新記事 by 片山 恵右 (全て見る)
- ゴルゴ13:第211話『AZ4 CP72』のみどころ - 2021年11月14日
- ゴルゴ13:第410話『イリスク浮上せよ』のみどころ - 2021年6月11日
- ゴルゴ13:第283話『未来への遺産』のみどころ - 2021年5月20日