この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第3巻収録。中国の統一戦線工作部から、亡命を計画する王徳明の暗殺を依頼されたゴルゴ。CIAの厳重警備のもとで護送されるため狙撃のチャンスがないと考えられたが、ゴルゴは針の穴を通すようなワンチャンスを発見する。神業的な狙撃を成功させるため、統一戦線工作部の面々とゴルゴの猛特訓が始まった……。脚本:小池一雄
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文化大革命中の中国人亡命者を扱った作品
本作は1969年8月に発表された最初期の作品の一つ。文化大革命中の中国から要人が亡命、要人を警護ずるCIAとゴルゴ、ゴルゴに仕事を依頼した中国統一戦線情報工作部のやり取りが見ものだ。文化大革命は、現在でも資料が少なく、当時の中国の状況を再現するのは難しい。
実際、初期のゴルゴ13で中国を扱ったのは、第12巻収録の『潜入ルートG3』や、第51巻収録の『毛沢東の遺言』など数えるほどしかない。ゴルゴの作者であるさいとう・たかを先生が、どのようにして文化大革命時代の中国の情報を入手していたのか大変興味深いところだ。
僅かなミスも許されないハードミッション
今回のゴルゴのミッションは、亡命者の王徳明がオーストリアからスイスを経て西側に亡命するのを阻止するものだ。しかも中立国で騒ぎを起こしてはならないため、白昼堂々、街中で射殺・爆殺するような手段は使えない。となると、スイスに入る前の列車で王徳明を仕留めなければならない。
ゴルゴのミッションの中でも難易度が高いもので、ゴルゴは中国統一戦線情報部のチームと入念に打ち合わせを重ねる。ゴルゴの相方となる中国統一戦線情報部も、秒単位の精密さが要求される作戦のため、何度も練習を繰り返した。
ターゲットを捉えた瞬間の会心の表情
ゴルゴは今回のミッションを達成するため特殊な銃をガンスミスに依頼する。ゴルゴが使用するのはドイツ製の世界最高水準の狙撃中「アンシュッツ」。試射を終えたゴルゴは、さらに“徹甲弾”という貫通力が高い銃弾を使用可能にするよう改造させた。列車走行中、たった一度だけ訪れる狙撃のチャンスに、ゴルゴも中国統一戦線情報部もすべてを賭けるしかない。
はたして列車が狙撃地点に差し掛かる寸前、王徳明の部屋で異変が発生する。慌てた王徳明が完全防備の部屋から出てきたその刹那、ゴルゴの銃弾が彼の胸を貫くという高難度狙撃だ。狙撃の直前、めったに表情を変えないゴルゴが見せた悪魔の笑みは魅力的であった。
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秋山 輝
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