この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第205巻収録。依頼を受けたものの、依頼人とターゲットが同時に事故死してしまった。この場合、ゴルゴが受け取った依頼金はどうなるのか? がテーマの短編。好青年トーマスの前に現れた一人の弁護士。彼は「一切の理由は聞かずに」の条件で大金を差し出してきた……。脚本:ながいみちのり
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ゴルゴの律儀なスタンスが垣間見える案件
依頼のルールに焦点を当てた話は多々あるが、本話はその名の通り「未遂案件」に対するゴルゴのスタンスが垣間見えるエピソード。標的が既に死亡していたり、他の暗殺者に先を越されたりした場合は依頼料を返金するのが基本だが、今回は標的と依頼人が同時に飛行機事故で死亡してしまったケース。
本人に返すことができないため、ゴルゴは弁護士を雇って依頼人の遺族を探し出し、理由を告げずに返還するという手段を取ったのである。作中でカリーも言うように、並の暗殺者なら金を懐に入れて終わりだろう。ゴルゴの並外れた律儀さが伝わる一幕だ。
生きて登場するのは善人ばかりだが……
トーマスと恋人のカリーをはじめ、トーマスの母・サマンサ、バクスター弁護士など、実直で無害な人物しか登場しないように思える本話。しかし、トーマスの亡き父・ダニエルに関しては、決して良い父親だったとは言えないだろう。
何しろ、相方のマーチンが30年前にサマンサを暴行していたことを知るや、彼への復讐をゴルゴに依頼するほどの熱意と財力はあるのに、自らサマンサを探し出して償おうとはしていないのだ。ゴルゴが介在したことで、復讐のための大金が回り回ってトーマスの人生を救うことになったのは、皮肉な話かもしれない……。
悪魔にも救いにもなるゴルゴという存在
トーマスやカリーからは「悪魔」と称されているものの、ゴルゴは標的や敵対者以外を積極的に不幸にすることはない。むしろ、彼の禁忌に触れさえしなければ、依頼人やその関係者にとっては救いをもたらす存在ともなりえるのが、ゴルゴ13という人物である。
そう考えれば、ゴルゴがすれ違いざまにトーマス達に見せた鋭い一瞥さえも、「こちらの世界に深入りするな」という一種の優しさからの忠告に思えてくる。母親に孫の顔を見せられなかったのは残念だったが、トーマスとカリーが平穏な日常で幸せになってくれることを願うばかりだ。
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東郷 嘉博
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