この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第47巻収録。太平洋戦争末期に撃沈された輸送船・安房丸に積まれていた財宝をめぐるミステリー。中国によって35年ぶりに引き揚げられた安房丸だが、積まれているはずの財宝は見当たらなかった。財宝隠匿の真相をCIAに嗅ぎつかれ情報操作に利用されることを恐れた内閣は、ゴルゴを使って真相を闇に葬ろうとする……。脚本:北鏡太
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積まれていた金塊はどこへ?
本作に登場する安房丸のモデルが、終戦間際となる1945年(昭和20年)4月1日にアメリカ海軍によって撃沈された阿波丸であるのは間違いない。
緑十字船としてアメリカ軍からも攻撃が禁じられていた阿波丸が撃沈された経緯は不可思議ながら、1980年前後に行われた引き上げ作業によって積まれていたともされる金塊や工業用ダイヤモンドなどが見つかっていない点もおかしなところだ。こうした謎をベースに本作は作られている。もちろんフィクションながらも、読者に「もしかしたら」と思わせる筋立てになっているのはさすがだ。

日本の陰で暗躍する黒幕
児玉誉士夫、三浦義一、笹川良一などの名前を聞いたことがあるだろうか。表だって活躍することは少なかったり、表舞台では別な顔を持ったりしながらも、政財界を陰から操ることで“黒幕”や“フィクサー”などと呼ばれることもある。
もっとも、名前が出てしまえばそれまでとも言えそうで、むしろ名前が出ていない人こそ本物の黒幕なのかもしれないが。ゴルゴシリーズでは、本作以外に『モスクワの記憶』『白い皇軍』などで黒幕が登場している。いずれも悲惨な最期を遂げているのは言うまでもなく、その意味ではスッとする結末となっている。
東京サミットなみの警備はザル同然?
興味深いのは、黒幕の狙撃をゴルゴに依頼するのが内閣調査室、そして黒幕を守るのは警察と防衛庁(当時)であること。つまりは日本の組織機構を二分した戦いとなっている。ただしゴルゴの狙撃自体はあっけなく完了している。それも警備員が、「東京サミットなみの警備だな……これじゃ敵も手が出まい」と言っている中での狙撃だ。
もっとも警備するはずのヘリコプターがゴルゴに乗っ取られていたのでは、警備体制に大穴が開いていたも同然だ。「銃器の注文以外なら、なんでも協力する」と言ってのけた内閣調査室とゴルゴの完全勝利と言えるだろう。

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研 修治

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