この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第108巻収録。芸術家のアッシュはスターダムを夢見て、日々、オブジェ制作に情熱を注いでいた。が、いっこうに作品は評価されず家賃も払えなくなったアッシュは、立ち退きを迫られ崖っぷち。そんなある日、アッシュの前にゴルゴが現れ、作品をすべて買い取りたいと申し出る。ゴルゴの真意はどこにあるのか……? 脚本:ながいみちのり
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必要経費を惜しまないゴルゴ
今更ながらであるが、ゴルゴは必要経費を惜しまない主義である。今エピソードでもマフィアと思われる組織のボス一人を狙撃するのに、ニューヨークのビルを丸ごと1棟買い取って爆破解体している。小市民として赤字では?と思ってしまうが、最近で言うところの“コスパ”など気にしないオトコ気が素晴らしい。
もっとも旅客機やメッサーシュミットを購入した『最後の間諜-虫-』やハリウッドのスタジオを借り切って大がかりなセットを組んだ『崩壊 第四帝国 狼の巣』などの経費からするとゴルゴにとっても痛くも痒くもないのかもしれない。
ビルの爆破解体を実現する諸条件
今エピソードに登場するビルの爆破解体。多くの人がテレビなどの衝撃映像として一度は見たことがあるシーンであろう。ところが、日本で爆破解体が行われた例は極めて少ない。理由はそもそも火薬類の規制が諸外国に比べて厳しいこと、建造物の強度が高めであること、建築物が密集しているところが多くその環境にはないこと、などが挙げられる。
最後の条件については日本特有の事情ではなく、アッシュの住むニューヨーク(と思われる)のアパートの密集具合にも当てはまると思われるが、そこはゴルゴだ。任務遂行のために役所へ裏から手を回すなどしたのであろう。
売れない芸術家アッシュ
売れない芸術家アッシュは分類するならスクラップ芸術家か。オルデンバーグやフィリップ・キングといった大家と自分のどこが違うのかと嘆いている。ゴルゴが気前よく全作品を買い取ってくれたからと言ってフロリダへ移住してしまうような志が比較対象と大きく違う点なのではないか。
いやしくも芸術家として功成り名を遂げたいのであれば、ニューヨークにとどまって次の制作へ取り掛かるべきであろう。実はアッシュにとって“最良の日”は“最悪の日”なのではないであろうか。ゴルゴ13研究家の杉森昌武氏は「ゴルゴも罪作り」とSPコミックスコンパクトで解説している。
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片山 恵右
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