この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第111巻収録。CIAの依頼により極秘空域で戦闘機を飛ばしていたゴルゴに、謎の戦闘機が襲撃する事件が発生した。調査の結果、米大統領直属のAI開発チームの暴走だったことが判明。チームの目的は、ゴルゴの飛行データを人工知能システムに取り込み、完璧な攻撃プログラムを持った戦闘機を作りあげることだった……。脚本:熊坂俊太郎
ゴルゴ対ゴルゴに至る経緯
ゴルゴとゴルゴが戦ったらどうなるか。『パンドラの柩』ではゴルゴのDNAを使った兵士を作ろうとするものの、それを察知したゴルゴが計画を頓挫させている。
本作ではゴルゴの飛行データを元に人工知能の開発を進めるグループが登場する。グループを率いるのはARPA(アメリカ戦略研究統括局)にて人工知能開発担当責任者の任にあるラズベリー中尉と20代プログラマー達だ。
『パンドラの柩』では成立しそこねたゴルゴ対ゴルゴながら、本作ではゴルゴ対人工知能ゴルゴが実現している。結果は想像できるだろうが、そこまでの展開には興味深いものがある。

ゴルゴを熟知する青年の正体
本作に気になる青年が登場する。グループメンバーの1人であるラドだ。ゴルゴのデータを入手して喜ぶメンバーの中でラドだけが、「君たちにはとても、ついていけない」や、「悪魔との取引を覚悟の上なら別だが……“ゴルゴ13”にまで、手を出すとは……ね」とゴルゴに敵対する愚を説いている。
小柄なアジア系のラド。思い出すのは『殺人マニュアル』(1994年12月発表)でゴルゴのデータ分析をしていたエドだ。
ただし眼鏡こそかけているものの風貌はかなり異なる。またインド在住のエドが1年たらずでアメリカ政府にスカウトされたとも考えにくい。
0.2%の勝機をつかむ
情報漏えいがばれたラドはラズベリー中尉に撃ち殺されてしまう。しかしそんなラズベリー中尉もゴルゴが操縦するF15のミサイルにより、開発中のF25ごと撃墜されている。
ゴルゴにとっては自分を害する対象を排除することが目的で、敵討ちの意図はないはずだ。それでも「少しぐらいはあるのかも」と人間らしいゴルゴを期待する自分がいる。
さて、MTIのコンピュータによるとゴルゴが勝利する確率はわずか0.2%とのこと。そんな離れ業をやってのけたゴルゴを、「“敵”に回さずにすんだという事だ」とアメリカ大統領が安堵するのも当然だろう。

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研 修治

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