この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス215巻収録。日本の官庁がハッキングをうけ、大量の情報が流出した。セキュリティ強化のために呼ばれた敏腕SE・鍛冶屋がハッキングはロシアの仕業と突き止める。これを察知したロシアは鍛冶屋の命を狙い始めるが……。ゴルゴの新しい助手の誕生を描く異色作。脚本:品川恵比寿
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有能な人材を活かせないこの国の現実
アメリカ帰りのセキュリティの専門家、ショーン・鍛冶屋のインパクトが光る本話。ラフな服装の彼に拒否反応を示したり、ITリテラシーの低さを指摘されて逆上したりと、日本の役人の「それらしさ」が実に生々しい。
結局、新組織の設立や報酬の増額を実現できず、彼に呆れて立ち去られてしまうのが、残念ながら現実と変わらないこの国のお役所体質なのだろう。かたや、傍若無人な人物に見えながら、震災のトラウマや命の危機に震え上がる弱さや、日本の現状を憂える真摯さも持ち合わせた鍛冶屋は憎めないキャラで、ゴルゴの気に召すのも納得だろうか。

ソフトとハードの境目がなくなる時代
今や地球全域に張り巡らされたインターネットだが、その通信の実際を担っているのは、世界の海に物理的に敷設された海底ケーブルである。2014年には、Googleの海底ケーブルがサメにかじられていた事案が話題になったこともあり(※)、本話のハッキングもそれに着想を得たものだろう。
通信の物理部分を狙うハードハッキングは、一周回って心理の盲点を突いた手法ともいえる。『情報屋の弟子』と同様、本話でも自動運転車やIT家電の暴走が描かれているが、ソフトとハードの境目が薄れつつある今、こうした脅威は作り話とはいえないかもしれない。
※出典:ギズモード・ジャパン『グーグルの海底ケーブル、サメに食べられていた』(2014年8月17日)
ゴルゴの新たな助手の再登場に期待
依頼人がルールを破らない限り、いかなる依頼でも引き受けるのがゴルゴの流儀ではあるが、依頼人側に認識不足がある場合は親切に(?)口を挟んでくれることもある。今回は、サイバーテロの犯人を鍛冶屋と早とちりした三島事務次官に対し、それとなく誤解を正す発言をし、結果的に真犯人の解明と抹殺を引き受けているのだ。
この過程で鍛冶屋の身辺調査も済ませていたからこそ、その後、助手に志願してきた彼を受け入れる判断も下せたのだろう。ゴルゴのリクルーティングが描かれた珍しいシーンでもあり、鍛冶屋の今後の再登場に期待が高まる。

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東郷 嘉博

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