この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第1巻収録。ナチの秘密警察に拉致されて行方不明になっていたフランス国防長官の妻子がエーゲ海のデロス島で発見された。フランス情報部は妻子の不自然な様子から、ソ連側の妻子のニセモノを使った陰謀だと推理。その真贋判定と暗殺をゴルゴに依頼する。ゴルゴの適役として個性的なキャラクター、ボネが登場。波止場での二人の駆け引きが秀逸。脚本:小池一雄
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テキスト量がやたら多い作品
とにかくテキスト量が多い。序盤のフランス諜報部・オマイリー部長が延々と政治談議をする場面である。集中力散漫で国際政治にも興味がない私は、この前半戦を乗り切るだけで、息も絶え絶えだったことを憶えている。
この記事を読んでくれている読者でテキストが苦手な方がいたならば、事前にこころの準備をしてから読み始めることをオススメしたい。そこを乗り越えてしまえば、荒削りな初期のゴルゴや、シリーズで一番最初にゴルゴとタイマン勝負を繰り広げた暗殺者・ボネの登場など、みどころ満載の一編といえるだろう。

若かりし日のデューク・東郷
なんといってもシリーズ第2話である。現在ではいぶし銀のキャラが出来上がっているデューク・東郷も若いこと若いこと。仕事面とプライベート面の両方で若いゴルゴを楽しむことができる。まず仕事面では狙撃現場を包囲されて冷や汗をながし、連行されてからは精神錯乱剤を飲まされてのたうちまわる。平成・令和ゴルゴからは想像できないお粗末さだ。
プライベートではヒロインのアルガリータとベッドを共にしたあと、互いに見つめ合いながら、アルガリータの頭をやさしく撫でる優しさをみせている。平成・令和作品に登場する娼婦たちが見たならば仰天するに違いない。
ゴルゴイズムの誕生
『各界著名人セレクション』で本作を推薦している漫画家・浦沢直樹氏は、同書掲載のインタビューにおいて「ゴルゴが転がりだした瞬間がこの第2話だと思います」と語っている。
つまり握手をしない、どこの組織にも属さないなどのゴルゴがゴルゴたりえる作品上の約束事、ゴルゴイズムが色濃く反映された最初の作品ということだろうか。連載開始当初は「10話で終わらせるつもりだった(さいとう先生談)」そうだが、まさかこのゴルゴイズムが連載50年を支えたバックボーンになるとは誰が想像できただろうか。

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町田 きのこ

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