この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第153巻収録。CIAの職員・マリアンヌは、ハウゼンと名乗る謎の男から、過去にマリアンヌが依頼したゴルゴの狙撃が、影武者を撃ったものだったと知らされる。調査の末、彼女は影武者制作を専門とする謎の組織の存在をつきとめるが……。脚本:志庵暮
スポンサーリンク
影武者による恐るべき世界支配戦略
「影武者」については、武田信玄がダミーを作ったという伝説が有名である。信玄は自分亡き後3年は死を伏せるよう遺言したらしいが、そのかいもなく武田家は滅亡した。
『幻の栽培』『顔のない男』など指導者側がセキュリティ等の理由で影武者を使うのはよく聞く話だが、ウィルキンソンのように誰彼かまわず、金でダミー制作を請け負うという設定には驚いた。日本の音楽関係者が来日できなくなった指揮者のダミー公演成功に「指揮者をもブランドとしてしかみずに騙される日本人っていうのは私から見れば哀れな」という言葉が情けない。
要人が犬を飼うのは影武者対策か
アメリカ大統領や皇室・王室関係者は犬を飼っている場合が多い。理由は定かではないが、ウィルキンソンのような悪巧みによる影武者対策ではないかと推測している。本作のように、外見や癖だけでなく声紋まで精緻なダミーを作られては、歯形でも調べない限り見破るのは難しい。
しかし長年の食生活や生活習慣から形成される「匂い・体臭」だけはごまかせない。娘のエリスと会うのは2年ぶりと言っていたから、エリスの飼い犬はおそらく父親のロメドと会ったことがないのだろう。ロメドを知っていたら、直ぐに露見してしまったと思われる。
美しくまばゆい星空はGをも照らす
恋は盲目とは実に的を得た表現である。マリアンヌは冒頭ウィルキンソンの卑劣なダミーの策略を見破ることができずに騙され、CIAとしての責任感から屈辱を強いられたが、エンディングでは、心身ともに屈辱から救ってくれたGへの想いのため、自分の目が曇ってしまう。
嫌悪のMASKに始まり追慕のMASKで終わりを迎える心憎い構成。理論的で沈着冷静なの彼女が、恋する少女のように男の背中に追いすがる姿が切ない。マリアンヌが、満天の星空を仰ぐ美しいラストシーンが胸を打つ。マリアンヌ、きらめく夜空はGへと続いているよ。
この作品が読める書籍はこちら
野原 圭
最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日