この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第153巻収録。二度の事故でパイロットとしての道を諦めたエリック。今はプロペラ機のメカニックとして空虚な日々を送っていた。そこへ現れたゴルゴは、麻薬王セベスを始末する任務にエリックを同行させようとする。じつはエリック、セベスの格納庫に眠るB-17爆撃機を操縦できる数少ない人物の一人だったのだ……。脚本:ながいみちのり
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禍福は糾える縄のごとし、成功後の落とし穴
意味深長なタイトルのとおり、パラシュートによって翻弄される男の人生を描いた哀しい物語である。飛行機の操縦に一流の腕を持ちながら、軍の訓練中にパラシュートが2度も開かない、まれにみる不運に見舞われ、借金漬けの酒浸りになったエリック。
それでも飛行機の整備でしのいでいたのは、やはり飛行機から離れられず、ゴルゴの見込んだとおり天性の相性を持っていたのだろう。臆病風に吹かれたため危ない仕事に手を出さなかったが、ゴルゴの出現で運命が二転三転してしまう。ピンチの時がチャンスだったがそれを生かしきれなかった。
命を左右するパラシュートの性能
エリックが特殊部隊の降下訓練で2度もパラシュートが開かなかったのはひとえに性能の問題だろう。その恐怖は察するに余りある。かつてアメリカが、自国産の自動車を日本に押し売りしようとしていたが、性能において日本製と勝負にならなかった。
日本も戦時中、パラシュートを生産していたが、戦後は、パラシュートを射出する特殊なバネ技術を、様々な民間製品に転化、活用していった会社もある。ゴルゴの用意したパラシュートは高性能な日本産かもしれない。パラシュート生地は防水で軽量かつ丈夫なので、バッグなどにも活用されている。
人の生死はいつも背中合わせ
結末は、工藤栄一監督『十三人の刺客』のラストシーンを思い出す。標的の馬鹿殿を成敗し、大願成就したとたん、決死で戦っていた刺客たちが、命を惜しむようになった結果、勢いを失って打ち倒されてしまう、という皮肉な話である。
エリックはゴルゴの「荒療治」によって過去のトラウマを克服し「あんたのおかげで失った勇気ってやつを取り戻した」までは良かったが、「野心」まで持ってしまったうえ、人を見る目がなくゴルゴの言葉を信用しなかった。死なんとすれば生き、生きんとすれば欲により死す、人はかくも哀しい運命を生きている。
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野原 圭
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