この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第55巻収録。アメリカ親善訪問中の中国の女性通訳が謎の失踪をした。調査の結果、失踪した通訳・華楊は、アメリカの外交評論家トニーと不倫関係にあったことが判明。国家機密に精通した華楊を探し出すため、中国政府はトニーを恐喝し、華楊を連れ戻す作戦にでるが……。脚本:北鏡太
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不倫相手を巻き添えに!女の報復恐るべし
本話のキーパーソンである女性通訳の華楊は、アメリカ人のトニーとの不倫に溺れてしまったばかりに、「里通外国」=スパイの容疑で裁かれる羽目になる。どうやら華楊はトニーに本気だったようだが、その彼が自分を利用していたと知った瞬間の、彼女のヤケクソのような変わり身が実に恐ろしい。
華楊はトニーに機密を話したと偽証し、彼を巻き添えにするのである。トニーとすれば、ちょっとした情報で一稼ぎするだけのつもりが、ソ連と中国に狙われ、挙句ゴルゴに始末されるという散々な末路。自業自得とはいえ、女の怖さを思い知らされる一幕だ。
敵の逃げ道を塞ぐゴルゴの冴えた作戦
今回のゴルゴの活躍で特筆すべきは、ソ連大使館に監禁されたトニーの暗殺を引き受けるにあたり、「ソ連大使館にトニーの身柄引き渡しを要求しろ」と依頼人に告げるくだり。ソ連側が知らぬ存ぜぬを通すのを見越した上での、「“存在しない者”を撃ち殺された場合、向こうはコトを公にするわけにはいくまい……」というゴルゴの読みが実に冴えている。
ちなみに、作中で述べられている「KGBの養成校に侵入し破壊工作を行った実績」とは、15巻収録の名長編『モスクワ人形』での一件のこと。ゴルゴの実績は各国の機関に知れ渡っているのだ。
現在も続いている中国の強制労働の実態
華楊が宣告された「労働改造」とは、政治犯などを監獄に収容し、「労働」を通じて「改造」するという趣旨の刑罰。裁判抜きで人民を拘束する「労働教養」と並び、人権蹂躙として国際的にも大きな批判を受けたこの制度は、表向きは2001年に廃止されたことになっているが、その後も中国の強制労働の実態は変わっていないとも言われる。
中国といえば、2011年には収容者にオンラインゲームをプレイさせて外貨を稼がせるという一風変わった強制労働が話題になったこともあった(※)。華楊はどんな労働を課されているのだろうか……。
※出典:ねとらぼ『オンラインゲームで「強制労働」――中国の刑務所で行われている、悪質な「お金稼ぎ」とは』
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東郷 嘉博
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