この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。米製薬会社に勤めるアコスタは、母国アルゼンチンで起こった軍事クーデターで、恩師の家族を殺害した犯人を40年以上追っている。ある日、提携交渉で会談したイタリア製薬大手のCEOの親指に奇妙な傷痕を発見する。その傷はかつて大量殺戮を犯した動かぬ証拠だった……。脚本:渡邉優
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日々更新されるゴルゴへの依頼ルート
ゴルゴへの接触方法には様々なルートがあるのは周知の事実だが、本話では「古いCIAの方法」なるものが言及される。その理由を尋ねておきながら、アコスタが「実は友人の……」まで言ったところでゴルゴは「もういい」と遮ってしまうのだが、接触前に依頼人の素性を調べ、元CIAの友人がいることまで突き止めていたのだろう。
なお、その友人が最初に見せたのが、「CIAが信用している一流のプロ」のリスト。この世界にはそうした仕事人が大勢いて、ゴルゴにお呼びが掛かるのは一部の超A級案件に過ぎないのだと改めて認識させられる。
幾十年を経ても消えない歴史の汚点
作中で語られるように、1970年代のアルゼンチンを覆った「汚い戦争」は、21世紀に入っても同国の歴史に暗い影を落としている。2005年には軍政下の犯罪への恩赦に違憲判決が下り、さながらナチス裁判の如く、殺害等に関与していた元軍幹部への幾十年越しの有罪判決が相次いでいる。
しかし、本話のセッピことキニョネスのように、名を変えて権力を握り、裁きを逃れている者も少なくないのだろう。司法が裁けない者への「血の復讐」は、作中では協力者に恵まれて結実するが、現実にはゴルゴは居ないのがもどかしいところだ……。
老人の宿願はこれで果たされたのか……
仇敵への復讐を誓う恩師・ペニャのために、ゴルゴにその助太刀を依頼するアコスタ。王道の復讐代行もののバリエーションといえるが、両者の撃ち合いの瞬間を狙ってターゲットを狙撃し、ペニャ自身にも自ら復讐を果たしたと誤認させるとは、毎度ながら卓越した技術である。
ペニャはここでセッピと刺し違えて死ぬつもりだったのだろうか。ラストで語られているように、弾丸が違うと分かればペニャは釈放されるだろうが、真実を知った彼の心境はいかほどか……。死んでいた方が良かったと思わないよう、アコスタが励ましてくれるものと信じたい。
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東郷 嘉博
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