この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第108巻収録。二人の老人が立て続けに暗殺される事件が発生。捜査にあたった公安の田所は、二人が大戦時、共に関東軍でスパイを摘発する部署に在籍していたことを突き止める。二人の過去を追ってロスへ飛んだ田所は、戦時中に暗躍した謎の工作機関「ハルピン特務機関」の存在を知ることになる……。脚本:国分康一
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800メートルを狙撃する腕前
冒頭で2件の殺人事件が発生する。1件は薬を使った後の焼死。もう1件は800メートルの狙撃。犯人のシルエットは短髪でガッチリした体格をしており、ゴルゴを思わせるものがある。しかし熟練-そんなものがあるかは分からないが-のゴルゴファンであれば、どこか違和感を覚えるだろう。
事件とほぼ同時にゴルゴが日本に入国したことを知った公安課長は、「ゴルゴ13なら……800mの狙撃も……軽々と遂行するだろう」とつながりを伺わせる発言をしている。ゴルゴなのか、それとも別人か。本作では中盤まで読者も謎を追いかける形になっている。

ゴルゴを追いかける警視庁の公安部
公安と言っても、日本にもいくつかの組織がある。今回登場するのは警視庁の公安部らしく、作中では千代田区霞が関にある立派な建物に似た物が描かれている。しかし部長のぼんくらぶりが痛々しい。ゴルゴが入国したことを知った部長は、「発見し次第、すぐ引っ張れ」と課長に命じる。
つまり別件で逮捕、尋問しろと。ゴルゴファンなら「何言ってるんだ」と思うだろう。ただしゴルゴをよく知るらしい課長からCIAや旧KGBすら手に負えなかったことを指摘され、「それが、彼が怪物と言われる所以でしょうが」などと言われた部長は言葉を無くしてしまう。
依頼と復讐とを整合させるゴルゴ
作中に登場する関東軍における白露部隊やスパイのユーリ・ナゴーレンは、大戦中に実在した浅野部隊とグルゲン・ナゴリャンをモデルにしたようだ。この辺りの歴史と絡めた展開は『河豚の季節』『暗黒海流』などと共通するものがある。
依頼人の意向に沿いつつターゲットを殺害するゴルゴ。逃げられないと悟ったターゲットは、「人生とは……ふしぎなものよ」の言葉をつぶやく。さらに振り回される一方だった公安刑事が最後に「すべては……闇の中だ」と悩んでいる。ここは不思議な闇を演出したゴルゴの手腕こそ見事と言うべきだろう。

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研 修治

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