この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第60巻収録。立花はアメリカで成功する野望に燃えるヤクザ。彼はアメリカン・マフィアを殲滅し、一流ホテルの筆頭株主にのし上がる。数千万ドルの財産を手に入れ、自らの勝利に酔いしれる立花。しかし彼に娘を殺されたフォスター夫妻は、娘の仇を討つべくゴルゴに立花抹殺を依頼する。脚本:北鏡太
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大塚家具などで話題になった委任状闘争
本話の主題の「プロキシー・ファイト(委任状闘争)」とは、株主総会の議決を有利に進めるため、他の株主の議決権の委任状を争奪する工作のこと。本話が世に出た1980年代前半は、まさにアメリカでM&Aブームが起こり、こうした工作が盛んに用いられるようになった時代だった。
日本では、2015年の大塚家具の「お家騒動」を巡り、父の大塚勝久陣営と娘の大塚久美子陣営が激しいプロキシー・ファイトを繰り広げた事例が記憶に新しい。それにしても、この題材を30年以上も前に取り上げていた『ゴルゴ』の先進性には驚かされるばかりだ。
ホテルの乗っ取りには成功したものの……
本話はホテルの乗っ取りを画策する日本人ヤクザ・立花の暗躍が本筋となっているが、意外にもゴルゴはその争いには絡んでこない。しかも作中でゴルゴの名前は度々出てくるものの、ゴルゴ本人は回想の3コマしか登場せず、ラストの狙撃シーンでさえ姿を見せないという徹底した黒子ぶりだ。
ホテルの財産を手に入れて悦に浸り、『ゴルゴ』における死亡フラグをビンビンに立てていた立花は、案の定あっけなくゴルゴの銃弾に倒れるのだが、その暗殺依頼は本筋とは無関係のもの。悪者はどこで恨みを買っているかわからないという皮肉な話だった。
どこで売っている?ゴルゴの隠し撮り写真
本話のゴルゴは黒子に徹しているものの、エピソードの中で二度にわたって写真で登場するという珍しい描写がある。一度目は立花に「ゴルゴ13を使って敵を始末してはどうか」と弁護士が入れ知恵するシーン。
そして二度目は立花に娘を殺されて怒りに燃える富豪フォスターに、探偵がゴルゴへの依頼を提案するシーンだ。それぞれ別カットから撮られたゴルゴの写真を所持していたが、各国の諜報機関ならいざ知らず、一介の弁護士や探偵がゴルゴの写真を有しているのは稀なケースだろう。ゴルゴの情報もあちこちで高く売られているのだろうか。
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東郷 嘉博
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