この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第134巻収録。判事のウィグマンは妻であるルースの浮気現場を目撃し、激昂のあまり射殺してしまう。地元のチンピラを使い隠蔽工作を進めるウィグマン。しかし偶然目撃してしまった隣人のキャサリンは、娘のように可愛がっていたルースの仇を討つことを決意する。亡き夫が残した“ある男”への連絡方法とは……? 脚本:夏緑
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これを読まずしてゴルゴは語れない異色作
かつてルーブルの至宝、モナ・リザが初来日したとき、保険が掛けられていなかったそうだ。理由は「値段がつけられないから」そんな逸話を思い出させる今回のミッションのお値段はゴルゴ自身の命。『冥王の密約』で命を救ってもらったゴルゴがその借りを返すお礼奉公なのだが、パッチワークキルトという地味な題材の使い方が絶妙だ。
クリエイターは得てして自分の好みに偏ってしまいがちで、気づかないうちにマンネリに陥るリスクがあるが、この異色作は、複数の脚本家を抱えるプロダクション制作ならではの利点が遺憾なく発揮されている。
例外につぐ例外に驚きの連続
まず、この依頼は、ノイマン医師が持つゴルゴへの依頼権を夫人のキャサリンが「相続」した形であり、加えて通常、依頼内容によってはお断りもあり得るのに、無条件承諾付きで、それらをゴルゴが認めていることが驚きである。
そして、彼の仕事の主眼は「狙撃」であり『白龍昇り立つ』では少年を守ってほしいという依頼に「ボディガードではない」と返す場面もあった。しかし今回はパッチワークの奪還という依頼であり、明らかに例外に該当する。さらに、いつもは嫌ならやめろの上から目線の態度なのに、言葉遣いや物腰が実に丁寧なのである。
検事は頭を撃ち抜かれたほうが良かったのか
ゴルゴの仕事の多くは法により解決不能な案件であり、制裁目的の場合は、当然当事者を殺傷するケースがほとんどである。この点、キャサリンはあくまで法の裁きに必要な証拠の入手を希望している。彼女はまさかゴルゴが殺人も請け負うとは考えてもいないのだろう。
しかし警察官・検事など犯罪を取り締まる側の人間は服役中、他の受刑者から想像を絶する仕打ちを受けるという話を他作品で見たことがある。上品な奥様キャサリンがそのようなことを知るはずもないが、ウイングマン検事はゴルゴに頭を撃ち抜かれた方が幸せだったのかもしれない。
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野原 圭
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