この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第138巻収録。終身刑を言い渡された凶悪犯・ホセの抹殺を依頼されたゴルゴ。が、ホセは別の刑務所への移送中に脱走。しかも、戦車にも匹敵する装備の現金輸送車で逃走していた。外部からの狙撃は無理と判断したゴルゴは、輸送車の構造を丹念に調べ上げるのだが……。
スポンサーリンク
女性ハッカーの協力で鋼鉄の輸送車に挑む
今回ゴルゴが相手にするのは、鋼鉄の要塞と称される現金輸送車。それを奪った逃亡犯・ホセの目的が、大金ではなく輸送車そのものという意外性が本話のツボだ。また、ゴルゴの協力者として登場するハッカーらしき女性も目を引く。
当局のシステムからホセの移送状況を把握したり、輸送車の図面を入手したりと有能ぶりを見せる彼女。ゴルゴとの関係は不明だが、任務の内容も知らされているようで、ゴルゴが信頼を置く人物であることがうかがえる。2008年のアニメ版ではミランダという名も付けられているが、一度限りの登場に終わったのは残念だった。
豪胆さと精度が合わさった神業の名狙撃
杉森昌武氏の「奇跡のスナイプ・ランキング」にも数えられる本話。装甲の弱点を突くべく、走る輸送車の底部に組み付く豪胆さが目を引くが、狙撃の精度も凄まじいものだ。よく観察すると、狙撃の直前のシーンでホセは再び女に運転を任せ、右座席に座っている。ゴルゴは右手に銃を持って車体底部に組み付いたため、ホセの座席は銃の逆側。
視界もない中、それでも正確に脊椎から脳まで銃弾を貫通させる腕前は流石の一言。依頼人の「“死神”の前では誰も死をまぬがれない」という独白の通り、敵の守りの堅牢さをものともしない名狙撃だった。
米国とキューバ、国交正常化への道は遠し
僅かな海路を挟んだ米国フロリダとキューバ。激化する難民問題が本話のエッセンスとなっており、短いページ数ながら、両国の難しい関係が生々しく描き出されている。依頼人である外相補佐官のアルメーダ女史も、その地位に就くため、黒髪を金髪に染め続けていることが語られる。
祖国がそうした環境のままでは、米国に渡る者が後を絶たないとも……。米国とキューバは2015年に国交を回復させたものの、トランプ政権下の制裁強化で再び両国の関係は冷え込んでいる。バイデン政権は規制緩和を表明しているが、関係正常化への道程はまだ遠いようである(※)。
※出典:新潮社Foresight『バイデン政権「米キューバ関係正常化」への遠い道のり』2021年2月9日
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第541話『PTSD』のみどころ - 2024年9月16日
- ゴルゴ13:第613話『オープンダイアローグ』のみどころ - 2024年9月14日
- ゴルゴ13:第611話『逆心のプラントアカデミー』のみどころ - 2024年9月13日