この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。ある精神科病院でおこなわれる看護師から患者への虐待行為。院長の小白井は過去にも同様の事件で世間を騒がせた男だった。小白井によって妻を失った元外事警察官・佐伯はゴルゴに接触、しかし、その依頼内容は「小白井の心を撃ってほしい」という奇妙なものだった…。
スポンサーリンク
尽きない日本医療の闇
本作のテーマは精神病院で起きた入院患者への虐待事件だ。同様の事件は老人介護施設や児童養護施設などでも度々起きている。ただし、それら関係者への処分は現場レベルで留まることが多く、肝心な医師免許のはく奪などに至ることは少ない。かつて精神病院で妻を亡くした佐伯の心境が伺える。
一方で作中における金の流れは面白い。入院患者を食い物にして稼いだ医師が高値で購入した絵画。その代金が佐伯に渡ってゴルゴへの依頼料になりかける。結果として依頼には至らないものの、ゴルゴと接触したことで依頼人である佐伯の心を動かした。
外事警察とは?
一般人とは縁の薄い外事警察(外事課)。諜報活動やテロ対策、外国人犯罪などを担当する部署で、最近話題になる外国人の不法滞在も外事警察が関わることが多い。依頼を受ける際にゴルゴは「どうして俺の連絡先を知っている?」と尋ね、佐伯は外事警察に所属していたと語ってゴルゴを納得させる。
なんと佐伯はゴルゴの口座番号も知っているとのこと。過去には『ペルセポネの誘拐』で、外事警察の土方警視正がゴルゴに依頼している。シリーズ中で何度も平和ボケを揶揄される日本ながら、現場レベルではゴルゴへの連絡方法が知られているのだろう。
依頼を断るゴルゴ
佐伯に「(ターゲットの)心を撃ってください」と言われて、「抽象的な対象を撃つことはできない」と断るゴルゴ。その後に語られる「クライアントの関係は対等」とするゴルゴの信条はファンなら旧知だろう。ゴルゴに会いながらも狙撃を依頼しなかった点で『愚か者の銃』のアンジェラが思い浮かぶ。
アンジェラとゴルゴの詳しい会話は描かれていないものの、本作における佐伯とゴルゴの会話から何となく想像できそうだ。結果的に佐伯は自力で抗議することを決める。いつものスカッとさに欠けるのは残念ながら、佐伯の努力が実ると信じたい。
この作品が読める書籍はこちら
2024年11月現在、単行本化はされていません。単行本化までしばらくお待ちください。
研 修治
最新記事 by 研 修治 (全て見る)
- ゴルゴ13:第644話『心を撃て!』のみどころ - 2024年11月28日
- ゴルゴ13:第643話『怪力戦士イヴァノバ』のみどころ - 2024年11月11日
- ゴルゴ13:第642話『女の平和』のみどころ - 2024年10月1日